パデセアメールマガジンvol.18-生物多様性基本法について-
2008/07/03 (Thu) 10:15
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○○○ パデセアメールマガジンVol.18 ○○○
生物多様性基本法が成立、施行へ
―事業計画の立案段階でのアセスメント実施が盛り込まれました―
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は巻末をご覧ください。今回のテーマは「生物多様性基本法」です。
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生物多様性の保全と持続的な利用に関する施策の基本事項が定められた「生物
多様性基本法」が5月28日成立し、6月6日に公布、同日から施行されました。
1.制定の背景
1992年に開催された「地球サミット」で生物多様性の包括的な保全とその持続
的利用を目的とする「生物多様性条約」の署名が行なわれ、1993年に発効しま
した。日本ではこの条約を直接受けて、「生物多様性国家戦略」を閣議決定し
てきました。一方、「鳥獣保護法」、「種の保存法」、「特定外来生物法」など、
生物多様性の保全にかかわる個別法があり施行されていますが、これらの個別法
では対象が限定されており生息環境を含めた野生生物の包括的な保全を図るには
限界がありました。また、閣議決定の「生物多様性国家戦略」は法的根拠がなく
法律の中での位置づけが必要になりました。このような状況の中で「生物多様性
基本法」が制定されました。生物多様性基本法が制定されたことは、この法律の
下に、生物多様性に関する個別法が有機的に整理されていくことを意味し、日本
の生物多様性の取組みが、統合的に実施される環境が整なったことになります。
2.「生物多様性基本法」のトピックス
生物多様性基本法は、環境基本法のもとで生物多様性分野の法律の上位に位置す
る法律制度として制定されたものです。この法律は、前文、3つの章及び27条、
附則から構成されていますが、その中のトピックスを以下に紹介します。
(1)「前文」には、“生物多様性の保全及び持続的可能な利用についての基本原則
を明らかにしてその方向性を示し、関連する施策を総合的かつ計画的に推進
するため、この法律を制定する”と謳っています。
(2)「定義」では、「生物の多様性」とは“様々な生態系が存在すること並びに
生物の種間及び種内に様々な差異が存在することをいう”と定義しています。
(3)「基本原則」には、予防原則に基づく取組みが明記されました。
生物種の絶滅或いは生態系の破壊は、一旦損なわれると再生を図ることは
極めて困難であるという認識に立ち、データや科学的な解明が不十分である
ことを理由に対策を先送りすることは、取り返しのつかない生物の多様性の
損失をもたらします。生物多様性に関する施策については、予防的な取組みが
重要であることが明記されました。「予防原則」という考え方は、1992年の
「地球サミット」における「リオ宣言」で示されました。
(4)「第二章生物多様性戦略」では生物多様性国家戦略を法定計画として位置づけ
ました。日本では「生物多様性条約」の定めに従って、「生物多様性国家戦略」
を閣議決定してきましたが、この国家戦略は法的な位置づけが無いため実効性
が伴わないという指摘がかねてからありました。今回の「生物多様性基本法」
では国家戦略の策定が定められ、法定計画としての性格を帯びることになり、
各種施策の着実な実行が求められるようになりました。
(5)「第三章基本的施策」では、事業の計画段階からの環境影響評価を事業者に
義務付けました。生物多様性に影響を及ぼすおそれのある事業を行なう事業者
等が、“その事業に関する計画立案の段階からその事業の実施までの段階に
おいて、生物多様性に及ぼす影響の調査、予測又は評価を行う”ことが規定
されました。現行の環境アセスメント法は、事業の骨格が決まってからの評価
であるため大きな計画の変更は困難であるという側面があります。
昨年、計画段階からのアセスメントである「戦略的環境アセスメント導入ガイド
ライン」が発表になりましたが、義務的なものではありません。今回の基本法
では、戦略的環境アセスメントに法的な裏づけを与えるものと評価されています。
(6)「附則」には、“種の保存法、自然環境保全法、自然再生推進法その他の法律の
施行状況を検討し、必要な処置を講ずる”ことを規定しており、個別法の改正に
踏み込んでいます。
3.生物多様性条約締約国会議の動向
生物多様性条約第9回締約国会議(COP9)が2008年5月19日~30日の日程で、ドイツ
のボンにて開催され、191ケ国の締約国及び関連国際機関、先住民代表、市民団体等
から約7000人以上が参加しました。日本からは、環境省など関係省が出席、また並行
して行なわれた閣僚級会議では環境大臣が出席しました。今回の会議では、「2010年
までに生物多様性の損失速度を顕著に減少させる」という「2010年目標」(*)の
達成に向け、各課題の進捗状況及び今後の取組強化の方向性について議論されました。
また、次回COP10は愛知県名古屋市において2010年10月に開催することが決定しました。
COP10においては2010までに生物多様性の損失速度を顕著に減少させるという、いわ
ゆる2010年目標の達成状況の評価とポスト2010 年目標など重要な決定が行なわれる
節目の年になります。2010年は国連が定める国際生物多様性年にあたります。
生物多様性基本法は名古屋開催のCOP10に向けて大きな弾みになり、生物多様性保全
の取組みが、今後更に広がっていくことが期待されています。
(*)2010年目標
「2010年までに生物多様性の損失速度を顕著に減少させる」という目標。
2002年オランダのハーグで開催された生物多様性条約第6回締約国会議で採択された。
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株式会社 パデセア 代表取締役 黒柳要次
東京都中央区新川1-22-12ニッテイビル4F
TEL 03-5541-6281 FAX 03-5541-1166
http://www.pdca.co.jp/ email:info@pdca.co.jp
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多様性基本法」が5月28日成立し、6月6日に公布、同日から施行されました。
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1992年に開催された「地球サミット」で生物多様性の包括的な保全とその持続
的利用を目的とする「生物多様性条約」の署名が行なわれ、1993年に発効しま
した。日本ではこの条約を直接受けて、「生物多様性国家戦略」を閣議決定し
てきました。一方、「鳥獣保護法」、「種の保存法」、「特定外来生物法」など、
生物多様性の保全にかかわる個別法があり施行されていますが、これらの個別法
では対象が限定されており生息環境を含めた野生生物の包括的な保全を図るには
限界がありました。また、閣議決定の「生物多様性国家戦略」は法的根拠がなく
法律の中での位置づけが必要になりました。このような状況の中で「生物多様性
基本法」が制定されました。生物多様性基本法が制定されたことは、この法律の
下に、生物多様性に関する個別法が有機的に整理されていくことを意味し、日本
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2.「生物多様性基本法」のトピックス
生物多様性基本法は、環境基本法のもとで生物多様性分野の法律の上位に位置す
る法律制度として制定されたものです。この法律は、前文、3つの章及び27条、
附則から構成されていますが、その中のトピックスを以下に紹介します。
(1)「前文」には、“生物多様性の保全及び持続的可能な利用についての基本原則
を明らかにしてその方向性を示し、関連する施策を総合的かつ計画的に推進
するため、この法律を制定する”と謳っています。
(2)「定義」では、「生物の多様性」とは“様々な生態系が存在すること並びに
生物の種間及び種内に様々な差異が存在することをいう”と定義しています。
(3)「基本原則」には、予防原則に基づく取組みが明記されました。
生物種の絶滅或いは生態系の破壊は、一旦損なわれると再生を図ることは
極めて困難であるという認識に立ち、データや科学的な解明が不十分である
ことを理由に対策を先送りすることは、取り返しのつかない生物の多様性の
損失をもたらします。生物多様性に関する施策については、予防的な取組みが
重要であることが明記されました。「予防原則」という考え方は、1992年の
「地球サミット」における「リオ宣言」で示されました。
(4)「第二章生物多様性戦略」では生物多様性国家戦略を法定計画として位置づけ
ました。日本では「生物多様性条約」の定めに従って、「生物多様性国家戦略」
を閣議決定してきましたが、この国家戦略は法的な位置づけが無いため実効性
が伴わないという指摘がかねてからありました。今回の「生物多様性基本法」
では国家戦略の策定が定められ、法定計画としての性格を帯びることになり、
各種施策の着実な実行が求められるようになりました。
(5)「第三章基本的施策」では、事業の計画段階からの環境影響評価を事業者に
義務付けました。生物多様性に影響を及ぼすおそれのある事業を行なう事業者
等が、“その事業に関する計画立案の段階からその事業の実施までの段階に
おいて、生物多様性に及ぼす影響の調査、予測又は評価を行う”ことが規定
されました。現行の環境アセスメント法は、事業の骨格が決まってからの評価
であるため大きな計画の変更は困難であるという側面があります。
昨年、計画段階からのアセスメントである「戦略的環境アセスメント導入ガイド
ライン」が発表になりましたが、義務的なものではありません。今回の基本法
では、戦略的環境アセスメントに法的な裏づけを与えるものと評価されています。
(6)「附則」には、“種の保存法、自然環境保全法、自然再生推進法その他の法律の
施行状況を検討し、必要な処置を講ずる”ことを規定しており、個別法の改正に
踏み込んでいます。
3.生物多様性条約締約国会議の動向
生物多様性条約第9回締約国会議(COP9)が2008年5月19日~30日の日程で、ドイツ
のボンにて開催され、191ケ国の締約国及び関連国際機関、先住民代表、市民団体等
から約7000人以上が参加しました。日本からは、環境省など関係省が出席、また並行
して行なわれた閣僚級会議では環境大臣が出席しました。今回の会議では、「2010年
までに生物多様性の損失速度を顕著に減少させる」という「2010年目標」(*)の
達成に向け、各課題の進捗状況及び今後の取組強化の方向性について議論されました。
また、次回COP10は愛知県名古屋市において2010年10月に開催することが決定しました。
COP10においては2010までに生物多様性の損失速度を顕著に減少させるという、いわ
ゆる2010年目標の達成状況の評価とポスト2010 年目標など重要な決定が行なわれる
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生物多様性基本法は名古屋開催のCOP10に向けて大きな弾みになり、生物多様性保全
の取組みが、今後更に広がっていくことが期待されています。
(*)2010年目標
「2010年までに生物多様性の損失速度を顕著に減少させる」という目標。
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