パデセアメールマガジンVol.35 - 政権交代後の地球温暖化施策 -
2009/09/03 (Thu) 11:00
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○○○ パデセアメールマガジンVol.35 ○○○
政権交代後の地球温暖化施策
―中心となる民主党の施策は―
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本メルマガは、弊社ホームページからのお申し込みがあった方、セミナー等に
参加されメルマガを希望された方に送付しています。メルマガの配信解除方法
は巻末をご覧ください。今回のテーマは「政権交代後の地球温暖化施策」です。
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8月30日の総選挙の結果、政権交代が実現することになりました。9月中に民主
党を中心にした政権がスタートします。総選挙では景気対策、農業、子育て・教育、
年金、医療など身近な問題が主な争点となり環境政策は表にあまり出ませんでした
が、環境政策では自民党と民社党の違いも大きく、政権交代により日本の環境施策
が大きく変るだろうと考えられます。
そこで、今月は環境施策のうち地球温暖化対策を、新政権の中心となる民主党の
マニフェスト(政権公約)などで見てみましょう。
1.温室効果ガス削減の中期目標
京都議定書に続く2013年以降の温暖化防止の国際枠組みは、今年の12月に開催
されるCOP15で最終合意をめざして国際交渉が大詰めを迎えます。政権交代後の
政府が最初に取り組む大きな課題の一つになるでしょう。
2020年までに温室効果ガスの排出をどれだけ削減するか。ポスト京都議定書の
焦点となる中期目標について、民主党のマニフェストは自民党政府が6月に発表
した中期目標とは大きな差があります。
自民党政府が発表した中期目標は「2005年比15%削減」でした。これに対して
民主党はより高い「1990年比で25%削減」を掲げています。自民党政府の目標を
90年比でみると8%削減となり、民主党との差は17%になります。この数値の違い
を2つの視点から見てみましょう。
その一つは温暖化対策に対する考え方の違いが反映しているものと考えられます。
自民党政府の数値は「単なる宣言ではなく、裏付けのある実行可能なもの」と
説明されており、日本経団連など産業界の意向を反映させた数値です。
一方、民主党の数値は、IPCCが示した「先進国全体で2020年に90年比25~40%削減」
を配慮し、国際交渉の場でも通用できる目標レベルを意識したものと考えられます。
もう一つの視点は削減の内容です。自民党政府の数値は、国内における温室効果
ガスの削減のみ。所謂「真水」なのに対し、民主党の数値は海外で削減した排出枠の
購入や植林吸収分を含めていることです。
従って、この数値の大小だけで達成に向けた難易度を単純に判断することは難しい
と思われます。次に達成するための政策を新政権の中心となる民主党のマニフェスト
で見てみましょう。
2.民主党の政策
(1)企業に排出枠(キャップ)を割り振るキャップ&トレード方式による国内排出量
取引制度の創設:実効性のある取引制度を2011年度から実施する。
(2)CO2排出に課税する環境税(地球温暖化対策税)の導入の検討:
地方財政に配慮しつつ、特定の産業に過度の負担にならないように留意した
制度設計を行う。
(3)CO2の「見える化」の推進:電気代やガス代等の請求書や領収書にCO2排出量等の
記載を推進する。また、家電製品などに関してもCO2排出量等を記載する制度を
導入し、消費者の商品選択に利用できるようにする。
(4)全ての再生可能エネルギーについて全量買取方式の固定価格買取制度の早期導入:
対象となる再生可能エネルギーは太陽光、風力、小火力、バイオマス、地熱とする。
これらよる発電量の全量を一定期間、一定価格で買取る制度を導入するとともに、
効率的な電力網(スマート・グリッド*)の技術開発・普及を促進する。
(5)エネルギー安定供給体制の確立:
日本のエネルギー自給率(現在は原子力をを含めて16%)の目標を2030年に30%、
2100年に50%とする。また、安定な経済成長を図るため、エネルギー、レアメタル
(希少金属)など、資源の安定供給体制を確立する。
(6)環境と経済との両立を図るエネルギー施策の確立:
1次エネルギーの総供給量に占める再生可能エネルギーの割合を2020年までに
10%程度の水準まで引上げる。具体策として燃料電池、超電導、バイオマスなど
の環境技術の研究開発・実用化を進める。
新政府が、これらの公約を何処まで「日本政府の計画」にまで落としこめるか、
まさに本当の戦いはこれからです。また、高速道路の無料化やガソリン税の暫定税率の
廃止が実現された場合、CO2の排出量が増えるとの試算が民間のシンクタンクから発表
され、地球温暖化対策と逆行しかねない政策もあります。どのように整合性を取るか、
新政府の真価が問われることになります。
低炭素社会への移行は、企業や家庭生活は応分の負担をする覚悟が必要です。再生
可能エネルギーの買取制度では電気料金の値上げ、温室効果ガスの削減や排出量取引
では企業経営に負担が増えるおそれがあります。これらの負担は気候変動によるリスク
を回避するために必要なコストであり、また新たなビジネスチャンスでもあるとの認識
が必要と考えられます。
*スマート・グリッド
コンピューターとインターネットを駆使する次世代電力インフラ。発電所、工場、ビル、家庭
などの施設を結び、効率的に電力を安定供給し、また状況に応じて使用電力
を制御することを目指す。アメリカで2011年から実証研究がスタート予定。
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★エコ検定対策セミナー公開コース開催予定
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10月から第7回の試験に向けて対策セミナーと演習問題を中心とした模擬テスト
&解説セミナーを実施します。
申込受付は9月中旬を予定しています。詳細はまたHPでご案内しますので少々
お待ちください。
・エコ検定対策セミナー :10月24日(土)、11月28日(土)
・模擬テスト&解説セミナー:12月5日(土)
なおエコ検定対策通信教育は随時受付中です。
http://www.pdca.co.jp/ecoken/correspondence.html
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株式会社 パデセア 代表取締役 黒柳要次
〒102-0083
東京都千代田区麹町2-12-13 LYNX麹町4F
03-5226-6721(TEL)/03-5226-6723(FAX)
http://www.pdca.co.jp
e-mail info@pdca.co.jp
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党を中心にした政権がスタートします。総選挙では景気対策、農業、子育て・教育、
年金、医療など身近な問題が主な争点となり環境政策は表にあまり出ませんでした
が、環境政策では自民党と民社党の違いも大きく、政権交代により日本の環境施策
が大きく変るだろうと考えられます。
そこで、今月は環境施策のうち地球温暖化対策を、新政権の中心となる民主党の
マニフェスト(政権公約)などで見てみましょう。
1.温室効果ガス削減の中期目標
京都議定書に続く2013年以降の温暖化防止の国際枠組みは、今年の12月に開催
されるCOP15で最終合意をめざして国際交渉が大詰めを迎えます。政権交代後の
政府が最初に取り組む大きな課題の一つになるでしょう。
2020年までに温室効果ガスの排出をどれだけ削減するか。ポスト京都議定書の
焦点となる中期目標について、民主党のマニフェストは自民党政府が6月に発表
した中期目標とは大きな差があります。
自民党政府が発表した中期目標は「2005年比15%削減」でした。これに対して
民主党はより高い「1990年比で25%削減」を掲げています。自民党政府の目標を
90年比でみると8%削減となり、民主党との差は17%になります。この数値の違い
を2つの視点から見てみましょう。
その一つは温暖化対策に対する考え方の違いが反映しているものと考えられます。
自民党政府の数値は「単なる宣言ではなく、裏付けのある実行可能なもの」と
説明されており、日本経団連など産業界の意向を反映させた数値です。
一方、民主党の数値は、IPCCが示した「先進国全体で2020年に90年比25~40%削減」
を配慮し、国際交渉の場でも通用できる目標レベルを意識したものと考えられます。
もう一つの視点は削減の内容です。自民党政府の数値は、国内における温室効果
ガスの削減のみ。所謂「真水」なのに対し、民主党の数値は海外で削減した排出枠の
購入や植林吸収分を含めていることです。
従って、この数値の大小だけで達成に向けた難易度を単純に判断することは難しい
と思われます。次に達成するための政策を新政権の中心となる民主党のマニフェスト
で見てみましょう。
2.民主党の政策
(1)企業に排出枠(キャップ)を割り振るキャップ&トレード方式による国内排出量
取引制度の創設:実効性のある取引制度を2011年度から実施する。
(2)CO2排出に課税する環境税(地球温暖化対策税)の導入の検討:
地方財政に配慮しつつ、特定の産業に過度の負担にならないように留意した
制度設計を行う。
(3)CO2の「見える化」の推進:電気代やガス代等の請求書や領収書にCO2排出量等の
記載を推進する。また、家電製品などに関してもCO2排出量等を記載する制度を
導入し、消費者の商品選択に利用できるようにする。
(4)全ての再生可能エネルギーについて全量買取方式の固定価格買取制度の早期導入:
対象となる再生可能エネルギーは太陽光、風力、小火力、バイオマス、地熱とする。
これらよる発電量の全量を一定期間、一定価格で買取る制度を導入するとともに、
効率的な電力網(スマート・グリッド*)の技術開発・普及を促進する。
(5)エネルギー安定供給体制の確立:
日本のエネルギー自給率(現在は原子力をを含めて16%)の目標を2030年に30%、
2100年に50%とする。また、安定な経済成長を図るため、エネルギー、レアメタル
(希少金属)など、資源の安定供給体制を確立する。
(6)環境と経済との両立を図るエネルギー施策の確立:
1次エネルギーの総供給量に占める再生可能エネルギーの割合を2020年までに
10%程度の水準まで引上げる。具体策として燃料電池、超電導、バイオマスなど
の環境技術の研究開発・実用化を進める。
新政府が、これらの公約を何処まで「日本政府の計画」にまで落としこめるか、
まさに本当の戦いはこれからです。また、高速道路の無料化やガソリン税の暫定税率の
廃止が実現された場合、CO2の排出量が増えるとの試算が民間のシンクタンクから発表
され、地球温暖化対策と逆行しかねない政策もあります。どのように整合性を取るか、
新政府の真価が問われることになります。
低炭素社会への移行は、企業や家庭生活は応分の負担をする覚悟が必要です。再生
可能エネルギーの買取制度では電気料金の値上げ、温室効果ガスの削減や排出量取引
では企業経営に負担が増えるおそれがあります。これらの負担は気候変動によるリスク
を回避するために必要なコストであり、また新たなビジネスチャンスでもあるとの認識
が必要と考えられます。
*スマート・グリッド
コンピューターとインターネットを駆使する次世代電力インフラ。発電所、工場、ビル、家庭
などの施設を結び、効率的に電力を安定供給し、また状況に応じて使用電力
を制御することを目指す。アメリカで2011年から実証研究がスタート予定。
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★エコ検定対策セミナー公開コース開催予定
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10月から第7回の試験に向けて対策セミナーと演習問題を中心とした模擬テスト
&解説セミナーを実施します。
申込受付は9月中旬を予定しています。詳細はまたHPでご案内しますので少々
お待ちください。
・エコ検定対策セミナー :10月24日(土)、11月28日(土)
・模擬テスト&解説セミナー:12月5日(土)
なおエコ検定対策通信教育は随時受付中です。
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