パデセアメールマガジンVol.51―生物多様性条約第10回締約国会議―
2010/11/02 (Tue) 12:35
○○○ パデセアメールマガジンVol.51 ○○○
― 生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)―
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★今回のメルマガテーマは「生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)」です。
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10月11日から30日にかけて生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)(国連地球
生きもの会議)が名古屋で開催されました。日本が議長国をつとめ、遺伝子資源
から得られた利益の配分ルール「名古屋議定書」、生態系保全のための世界共通
目標「愛知ターゲット」等が採択されました。名古屋議定書は今後批准の意思を
示す各国の署名手続きが来年2月以降に行われ、50カ国目の批准が完了した90日後に
発効することになっています
1.生物多様性条約とCOP10
生物多様性条約は、1992年6月ブラジルで開催された地球サミットで、地球温暖化
対策を定めた気候変動枠組条約とともに条約に加盟するための署名が開始され、
1993年12月29日に発効しました。日本は1993年5月23日に批准し、締約国になり
ました。締約国数は193の国と地域です。アメリカはこの条約を批准していません。
生物多様性条約は、(1)生態系を守る、(2)回復が追いつく範囲で利用する
(持続可能な利用)、(3)生物から得られる遺伝資源の利益を利用国と提供国が
公正に分け合う、を主要目的としています。この3つが一体となって初めて条約の
目的が達成できるのですが、条約発効からこれまでの間、(3)の利益を公正に配分
する仕組みが整っていませんでした。
今回の名古屋会議(COP10)は、約2年に1度開かれてきた締約国会議の10回目の
節目の会議。数ある議題の中で焦点となったのは
(1)医薬品や食品などの原料となる動植物、微生物など「遺伝資源」の利用と
利益配分の仕組みを定める「名古屋議定書」
(2)2020年に向けた生態系保全の世界共通目標「愛知ターゲット」の採択でした。
条約を本格稼動させられるかどうか注目が集まり、参加登録者はNGOや
企業関係者などを含め約1万8千人と報道されています。先進国と途上国の対立は
厳しく、交渉は難航しましたが、会期を延長して「名古屋議定書」と「愛知ターゲット」
が採択されました。地球温暖化防止の「京都議定書」に続いて、日本が主導的な
役割を果たした新たな国際ルールが策定されました。
2.名古屋議定書
生物多様性条約の目的の一つに「遺伝資源の利用から生じた利益の公平な配分(ABS*)」
があります。このABSをめぐり議論は条約発効から17年が経過した今も、解決をみない
懸案事項となっていました。
もともと途上国にあった遺伝資源を、先進国企業が製品開発に利用し、利益を上げて
いる事例が多いことから、利害が衝突しあって折り合いがつかないためです。
(*)ABS:Access to genetic resources and Benefit Sharingの略
今回合意された議定書の骨子は次の通りです。
▽遺伝資源を利用する場合は、事前に原産国の許可を得る。
▽資源を利用する側は、原産国側と利益配分について個別契約を結ぶ。
▽生物が持つ成分を化学合成などで改良を加えた製品(派生物)の一部は利益配分の
対象に含むことが出来る。対象にするかどうかは、契約時に個別に判断。
▽遺伝資源による利益配分の一部を原資にした「多国間基金」を設置する
▽不正に持ち出された資源ではないかをチェックする機関を各国が一つ以上設ける。
なお、利益配分の対象となる遺伝資源については、途上国側は植民地時代に持ち
出された遺伝資源まで遡って利益配分することを求めていましたが、議定書発効
以降に対象が限定されました。
議長を務めた日本の松本環境相は、会議閉幕後、名古屋
議定書の約束を守る上で「国内法の整備を速やかに検討する」と表明しました。
3.愛知ターゲット
生態系の損失を食い止めるための2020年までの世界目標です。2002年のCOP6で「2010年目標」
(2010年までに多様性が失われる速度を顕著に減少させる)が採択されましたが、一つも
達成できませんでした。愛知ターゲットはこれを受け、2011年以降に世界が取り組む努力目標を
定めたものです。2020年までの取り組みを総括的に示した全体目標「2020年までに、生態系を
保全する目的で、生物多様性の損失を止めるための行動を起こす」と、その下に「森林を含む
動植物の生息域の損失速度を可能ならゼロに近づけ、少なくとも半減」、「少なくとも陸域の
17%、海洋の10%に保護区を設ける」、「愛知ターゲットを実施するための資金を現在より
大幅に増やす」など20の個別目標で構成されています。
漁業制限や保護区の指定など各国はこの目標に沿った政策をつくり、生態系を保全するための
取り組みを進めていくことになります。
4.その他
(1)「名古屋・クアラルンプール補足議定書」の採択
遺伝子の一部を操作した「遺伝子組み換え作物」は、自然にどんな影響を与えるのか。
まだ未知の部分が多く、生態系を乱す可能性があることから、2000年に、国際取引のルール
「カルタヘナ議定書」が締結され、生態系への影響評価や管理のあり方が定められていました。
今回の会議では、輸入した遺伝子組み換え作物が生態系に被害を与えた場合の対応を定めた
「名古屋・クアラルンプール補足議定書」が採択されました。「カルタヘナ議定書」を補完する
ものです。
(2)「生態系と生物多様性の経済学(TEEB)」の最終報告書の公表
生き物や自然環境の経済的価値などを分析した「生態系と生物多様性の経済学(TEEB)」
の最終報告書が公表されました。動植物や森林の保護など生態系保全に年450億ドル
(約3兆6千億円)を投じれば長期的には水産資源の増加や温暖化防止効果などで年5兆ドル
(約400兆円)の経済価値を生み出せる、保全を一切しないと最大で年4兆5千ドルの損失が
出る可能性があるとの試算が紹介されています。
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★eco検定対策セミナー公開コース受付中
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毎年好評を頂いてますが、第9回(12月19日)のeco検定試験に向けて、以下の
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申込受付など詳細はHPをご参照ください。http://www.pdca.co.jp/index.html
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1.生物多様性条約とCOP10
生物多様性条約は、1992年6月ブラジルで開催された地球サミットで、地球温暖化
対策を定めた気候変動枠組条約とともに条約に加盟するための署名が開始され、
1993年12月29日に発効しました。日本は1993年5月23日に批准し、締約国になり
ました。締約国数は193の国と地域です。アメリカはこの条約を批准していません。
生物多様性条約は、(1)生態系を守る、(2)回復が追いつく範囲で利用する
(持続可能な利用)、(3)生物から得られる遺伝資源の利益を利用国と提供国が
公正に分け合う、を主要目的としています。この3つが一体となって初めて条約の
目的が達成できるのですが、条約発効からこれまでの間、(3)の利益を公正に配分
する仕組みが整っていませんでした。
今回の名古屋会議(COP10)は、約2年に1度開かれてきた締約国会議の10回目の
節目の会議。数ある議題の中で焦点となったのは
(1)医薬品や食品などの原料となる動植物、微生物など「遺伝資源」の利用と
利益配分の仕組みを定める「名古屋議定書」
(2)2020年に向けた生態系保全の世界共通目標「愛知ターゲット」の採択でした。
条約を本格稼動させられるかどうか注目が集まり、参加登録者はNGOや
企業関係者などを含め約1万8千人と報道されています。先進国と途上国の対立は
厳しく、交渉は難航しましたが、会期を延長して「名古屋議定書」と「愛知ターゲット」
が採択されました。地球温暖化防止の「京都議定書」に続いて、日本が主導的な
役割を果たした新たな国際ルールが策定されました。
2.名古屋議定書
生物多様性条約の目的の一つに「遺伝資源の利用から生じた利益の公平な配分(ABS*)」
があります。このABSをめぐり議論は条約発効から17年が経過した今も、解決をみない
懸案事項となっていました。
もともと途上国にあった遺伝資源を、先進国企業が製品開発に利用し、利益を上げて
いる事例が多いことから、利害が衝突しあって折り合いがつかないためです。
(*)ABS:Access to genetic resources and Benefit Sharingの略
今回合意された議定書の骨子は次の通りです。
▽遺伝資源を利用する場合は、事前に原産国の許可を得る。
▽資源を利用する側は、原産国側と利益配分について個別契約を結ぶ。
▽生物が持つ成分を化学合成などで改良を加えた製品(派生物)の一部は利益配分の
対象に含むことが出来る。対象にするかどうかは、契約時に個別に判断。
▽遺伝資源による利益配分の一部を原資にした「多国間基金」を設置する
▽不正に持ち出された資源ではないかをチェックする機関を各国が一つ以上設ける。
なお、利益配分の対象となる遺伝資源については、途上国側は植民地時代に持ち
出された遺伝資源まで遡って利益配分することを求めていましたが、議定書発効
以降に対象が限定されました。
議長を務めた日本の松本環境相は、会議閉幕後、名古屋
議定書の約束を守る上で「国内法の整備を速やかに検討する」と表明しました。
3.愛知ターゲット
生態系の損失を食い止めるための2020年までの世界目標です。2002年のCOP6で「2010年目標」
(2010年までに多様性が失われる速度を顕著に減少させる)が採択されましたが、一つも
達成できませんでした。愛知ターゲットはこれを受け、2011年以降に世界が取り組む努力目標を
定めたものです。2020年までの取り組みを総括的に示した全体目標「2020年までに、生態系を
保全する目的で、生物多様性の損失を止めるための行動を起こす」と、その下に「森林を含む
動植物の生息域の損失速度を可能ならゼロに近づけ、少なくとも半減」、「少なくとも陸域の
17%、海洋の10%に保護区を設ける」、「愛知ターゲットを実施するための資金を現在より
大幅に増やす」など20の個別目標で構成されています。
漁業制限や保護区の指定など各国はこの目標に沿った政策をつくり、生態系を保全するための
取り組みを進めていくことになります。
4.その他
(1)「名古屋・クアラルンプール補足議定書」の採択
遺伝子の一部を操作した「遺伝子組み換え作物」は、自然にどんな影響を与えるのか。
まだ未知の部分が多く、生態系を乱す可能性があることから、2000年に、国際取引のルール
「カルタヘナ議定書」が締結され、生態系への影響評価や管理のあり方が定められていました。
今回の会議では、輸入した遺伝子組み換え作物が生態系に被害を与えた場合の対応を定めた
「名古屋・クアラルンプール補足議定書」が採択されました。「カルタヘナ議定書」を補完する
ものです。
(2)「生態系と生物多様性の経済学(TEEB)」の最終報告書の公表
生き物や自然環境の経済的価値などを分析した「生態系と生物多様性の経済学(TEEB)」
の最終報告書が公表されました。動植物や森林の保護など生態系保全に年450億ドル
(約3兆6千億円)を投じれば長期的には水産資源の増加や温暖化防止効果などで年5兆ドル
(約400兆円)の経済価値を生み出せる、保全を一切しないと最大で年4兆5千ドルの損失が
出る可能性があるとの試算が紹介されています。
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TEL 03-5226-6721/FAX 03-5226-6723 email:info@pdca.co.jp
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