パデセアメールマガジンVol.54 ―気候変動枠組条約COP16「カンクン合意」を採択―
2011/01/11 (Tue) 12:30
○○○ パデセアメールマガジンVol.54 ○○○
ポスト京都枠組みづくりの足がかり
―気候変動枠組条約COP16「カンクン合意」を採択―
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2010年11月29日から12月10日までメキシコのカンクンにおいて、気候変動枠組
条約第16回締約国会議(COP16)が開催されました。これは、2012年で期限が
切れる「京都議定書」以降(ポスト京都)の新たな枠組みを話し合うための国連の
会議です。
今回の会議COP16では、ポスト京都以降の温暖化対策について、今後の交渉の基礎
となる「カンクン合意」が採択され、2011年の南アフリカで開催されるCOP17へ向けて
の足がかりとなった内容が織り込まれました。
1.COP16の概要
現在の地球温暖化対策の枠組みとなっている京都議定書には大きな問題があります。
アメリカは議定書から離脱し、最大の排出国である中国や排出量が急増している
インドなどの途上国には削減義務はありません。議定書が削減義務を課している
約40カ国のCO2排出量を合計しても世界全体の3割未満で、アメリカ、中国の2大
排出国が削減の対象外となっている京都議定書をこのまま延長させても、世界の
排出量削減に結びつかないことは明らかです。
2009年に開催されたCOP15(コペンハーゲン会議)では、途上国と先進国の意見の
対立が解けず、政治的合意文書「コペンハーゲン合意」がまとめられましたが、
ポスト京都議定書の具体的な枠組みづくりは2010年のCOP16に先送りとなっていました。
こうした状況の中で開催された2010年のCOP16では、COP15で作成された「コペン
ハーゲン合意」を踏まえ、アメリカ・中国を含む全ての主要排出国が参加する
公平でかつ実効的な国際枠組みを構築する新しい法的文書の採択を目指して議論が
進められました。途上国から先進国に対しては、京都議定書の延長を強く要求されまし
たが、先進国のみに義務を課し、アメリカや中国の参加が参加していない京都議定書は、
世界規模の温室効果ガス削減につながらないことから、日本は京都議定書の延長に
反対の立場を貫きました。これに対し、途上国を中心に「硬直な態度で交渉を阻害して
いる」と反発を受けたと報道されています。
会議では主に、先進国だけに削減義務を求めている京都議定書を延長するか、
新たな国際体制づくりを進めるか、をめぐって各国の利害が激しく対立し、今回の会議でも
ポスト京都の枠組みづくりは出来ずCOP17以降に持ち越され、また京都議定書の延長問題も
先送りされました。しかしその中で進んだのは、昨年のCOP15で「留意する」という表現に
とどまったコペンハーゲン合意の枠組みが「カンクン合意」として国連の正式文書となり、
2011年末のCOP17への足がかりが出来たことです。
2.カンクン合意の骨子
すべての先進国、途上国を対象とする新たな枠組みの構築を目指すことで合意した
「カンクン合意」は一定の前進といえます。新たな枠組みの骨格は、先進国にこれまで同様
削減義務を課す一方、途上国には自主的な削減を求め、削減の実施状況について国際的な
チェックを受ける内容になっています。
「カンクン合意」の骨子は次の通りです。
・地球全体の平均気温上昇を産業革命以前に比べ2℃未満に抑える
・京都議定書の第1約束期間(08年~12年)と13年以降の第2約束期間に空白期間を作ら
ないよう、出来る限り早く結論を出す
・50年までの世界全体の削減目標をCOP17で検討する
・「コペンハーゲン合意」に基づき先進国と途上国が提示した国別の排出削減目標と
排出抑制行動に留意する
・すべての国を対象とした一つの削減枠組みに関して法的拘束力の有無を含めた協議を
継続する
・先進国は削減目標を掲げ達成状況を、排出量を毎年報告し、国際的な検証を受ける
・途上国も20年までに何も対策をとらない時の排出量からの削減目標を自主的に掲げ、
達成状況を2年に1度報告し国際的な検証を受ける
・途上国での森林破壊抑制による排出削減促進の仕組みを検討する
・途上国の排出削減を支援する「グリーン気候基金」を設立する
・温暖化被害対策の多国間協力の枠組み「カンクン適応フレームワーク」を新設する
2012年に期限切れとなる京都議定書については、排出量削減に空白が生まれない形で結論を
出すと明示していますが、2011年のCOP17が決裂し、空白が生じれば温暖化対策の大幅な後退は
必至です。議定書改正手続きや各国の批准手続きに必要な時間を考慮すると2011年末のCOP17が
正念場となります。
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明けましておめでとうございます。
今年も読者の皆様にお役に立てるような情報をタイムリーにお届けできるよう
努力したいと思っています。
よろしくお願いします。
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株式会社 パデセア 代表取締役 黒柳要次
東京都千代田区麹町2-12-13 LYNX麹町4F
TEL 03-5226-6721/FAX 03-5226-6723 email:info@pdca.co.jp
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条約第16回締約国会議(COP16)が開催されました。これは、2012年で期限が
切れる「京都議定書」以降(ポスト京都)の新たな枠組みを話し合うための国連の
会議です。
今回の会議COP16では、ポスト京都以降の温暖化対策について、今後の交渉の基礎
となる「カンクン合意」が採択され、2011年の南アフリカで開催されるCOP17へ向けて
の足がかりとなった内容が織り込まれました。
1.COP16の概要
現在の地球温暖化対策の枠組みとなっている京都議定書には大きな問題があります。
アメリカは議定書から離脱し、最大の排出国である中国や排出量が急増している
インドなどの途上国には削減義務はありません。議定書が削減義務を課している
約40カ国のCO2排出量を合計しても世界全体の3割未満で、アメリカ、中国の2大
排出国が削減の対象外となっている京都議定書をこのまま延長させても、世界の
排出量削減に結びつかないことは明らかです。
2009年に開催されたCOP15(コペンハーゲン会議)では、途上国と先進国の意見の
対立が解けず、政治的合意文書「コペンハーゲン合意」がまとめられましたが、
ポスト京都議定書の具体的な枠組みづくりは2010年のCOP16に先送りとなっていました。
こうした状況の中で開催された2010年のCOP16では、COP15で作成された「コペン
ハーゲン合意」を踏まえ、アメリカ・中国を含む全ての主要排出国が参加する
公平でかつ実効的な国際枠組みを構築する新しい法的文書の採択を目指して議論が
進められました。途上国から先進国に対しては、京都議定書の延長を強く要求されまし
たが、先進国のみに義務を課し、アメリカや中国の参加が参加していない京都議定書は、
世界規模の温室効果ガス削減につながらないことから、日本は京都議定書の延長に
反対の立場を貫きました。これに対し、途上国を中心に「硬直な態度で交渉を阻害して
いる」と反発を受けたと報道されています。
会議では主に、先進国だけに削減義務を求めている京都議定書を延長するか、
新たな国際体制づくりを進めるか、をめぐって各国の利害が激しく対立し、今回の会議でも
ポスト京都の枠組みづくりは出来ずCOP17以降に持ち越され、また京都議定書の延長問題も
先送りされました。しかしその中で進んだのは、昨年のCOP15で「留意する」という表現に
とどまったコペンハーゲン合意の枠組みが「カンクン合意」として国連の正式文書となり、
2011年末のCOP17への足がかりが出来たことです。
2.カンクン合意の骨子
すべての先進国、途上国を対象とする新たな枠組みの構築を目指すことで合意した
「カンクン合意」は一定の前進といえます。新たな枠組みの骨格は、先進国にこれまで同様
削減義務を課す一方、途上国には自主的な削減を求め、削減の実施状況について国際的な
チェックを受ける内容になっています。
「カンクン合意」の骨子は次の通りです。
・地球全体の平均気温上昇を産業革命以前に比べ2℃未満に抑える
・京都議定書の第1約束期間(08年~12年)と13年以降の第2約束期間に空白期間を作ら
ないよう、出来る限り早く結論を出す
・50年までの世界全体の削減目標をCOP17で検討する
・「コペンハーゲン合意」に基づき先進国と途上国が提示した国別の排出削減目標と
排出抑制行動に留意する
・すべての国を対象とした一つの削減枠組みに関して法的拘束力の有無を含めた協議を
継続する
・先進国は削減目標を掲げ達成状況を、排出量を毎年報告し、国際的な検証を受ける
・途上国も20年までに何も対策をとらない時の排出量からの削減目標を自主的に掲げ、
達成状況を2年に1度報告し国際的な検証を受ける
・途上国での森林破壊抑制による排出削減促進の仕組みを検討する
・途上国の排出削減を支援する「グリーン気候基金」を設立する
・温暖化被害対策の多国間協力の枠組み「カンクン適応フレームワーク」を新設する
2012年に期限切れとなる京都議定書については、排出量削減に空白が生まれない形で結論を
出すと明示していますが、2011年のCOP17が決裂し、空白が生じれば温暖化対策の大幅な後退は
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