パデセアメールマガジンVol.57-日本原子力発電の現状
2011/04/04 (Mon) 12:30
○○○ パデセアメールマガジンVol.57 ○○○
日本原子力発電の現状
―原発運転54基、世界で3番目の設備能力―
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★今回のテーマは「日本原子力発電の現状」です。
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東北地方太平洋沖地震により被災された方々には心からお見舞い申し上げます。
そして原発事故が重なりました。1日も早く終息するよう祈るばかりです。
今月は、原発事故の発生を受けて日本の原子力発電の現状について調べました。
2010年3月末現在、日本では54基の商業用原子力発電所が運転されています。
今後、14基(内2基建設中)の増設計画があります。しかし、東京電力の福島第1
原発の事故の後、この増設計画を再考する動きが出ています。
1.日本の原子力発電の運転状況
1966(昭和41)年に日本原子力発電の東海発電所が日本で初の営業運転を開始し、
1970(昭和45)年から1971(昭和46)年にかけて日本原子力発電の敦賀発電所1号機、
関西電力の美浜発電所1号機、及び東京電力の福島第1原子力発電所1号機が相次いで
営業運転に入りました。以来、2010年3月末現在、商業用の原子力発電所は54基、
合計出力4,885万kWが運転しています。
2009年度の原子力発電電力量は、日本の総発電力量の約29%を占めています。
これを電力会社別に見ると、原発比率が40%を超えているのは四国電力、九州電力、
関西電力の3電力、30%台は北海道電力、北陸電力の2電力、東京電力は約27%、
10%台は中国電力、中部電力の2電力となっています。沖縄には原発はありません。
日本で主として採用されている原子炉は軽水炉と呼ばれるものであり、軽水(注1)
を減速材・冷却材に兼用し、燃料には低濃縮ウランを用いるものです。
注1)軽水:普通の水のことをさす。これに対し重水素(水素原子に中性子が加わった
もの)に酸素が結合したものが重水であり、重水炉に用いられる。
軽水炉は世界の原子力発電の中心となっており、沸騰水型(BWR)と加圧水型(PWR)の
2種類に分類されます。BWRは原子炉の中で蒸気を発生させ、それにより直接タービン
を回す方式であり、PWRは原子炉で発生した高温高圧の水を蒸気発生器に送り、
そこで蒸気を作ってタービンを回す方式です。2010年3月末現在、日本ではBWR30基、
PWR24基が運転中です。事故があった東京電力福島第1発電所の1号機~6号機は
すべて沸騰水型(BWR)の原子炉です。その他の原子炉としては、高速増殖炉(FBR)が
あり、研究開発段階炉として(独)日本原子力研究開発機構の高速増殖の原型炉
(もんじゅ)が建設段階です。
2.世界の主要国との比較
世界主要国の原子力発電設備能力は次の通りです。(2010年1月1日現在)
日本はアメリカ、フランスに次ぎ、世界で3番目の設備能力を有しており、ロシア、
ドイツ、韓国がこれに続きます。以下の単位は万kWです。
アメリカ:10,534(104基)、フランス:6,602(59基)、日本:4,885 (54基)、
ロシア:2,319(27基)、ドイツ:2,151(17基)、韓国:1,772 (20基)、
全世界:38,916(432基)
また、総発電電力量に占める原子力発電の割合を見ると、日本はフランス、韓国に
次いで高い割合になっています。(2008年度時点)
フランス:77.1%、韓国:34%、日本:24%、ドイツ:23.5%、アメリカ:19.3%、
世界13.5%
3.日本の原子力発電計画
1970年代の2度の石油危機を経験した日本は、石油への依存を減らし、エネルギー源
の多様化を進めた結果、原子力や天然ガスの割合が増えました。
「京都議定書目標達成計画」では、“発電過程で二酸化炭素を排出しない原子力
発電については、地球温暖化対策の推進の上で極めて重要な位置を占めるものである。
今後も安全確保を大前提に、原子力発電の一層の活用を図る”として原発を推進して
きました。
平成22年6月に決定されたエネルギー基本計画(第二次改定)では、原子力発電の
推進を積極的に推進し「目指すべき姿」を次のように述べています。
“2020年までに、9基の原子力発電所の新増設を行うとともに、設備利用率約85%を
目指す。(現状:54基稼動、設備利用率:(2008年度)約60%、(1998年度)約84%)。
さらに、2030年までに、少なくとも14基以上の原子力発電所の新増設を行うとともに、
設備利用率約90%を目指していく。これらの実現により、水力等に加え、原子力を含む
ゼロ・エミッション電源比率を現状34%から2020年までに約50%以上、2030年までに
約70%とすることを目指す。”
具体的には2010年3月末現在、建設段階の原発は2基(電源開発大間、中国電力島根3号)、
着工準備中のものが12基あります。しかし、東京電力の福島第1原発の事故を受けて、
“電力各社の原発計画では建設作業を中断したり、計画そのものを先送りしたりする
動きが出ています。各地の原発建設が大きく後ずれする可能性が出てきた。”との
報道があります。日本におけるエネルギー政策の見直しは必至の状況となっています。
また、経済産業相は3月30日、“全国の原発で津波の被災に備えた緊急安全対策を
とるよう、電力会社に指示した。原子力安全・保安院が1カ月以内に対策の実施状況を
確認する”ことが報じられています。
一方海外でも、“中国の原発建設計画審査の一時停止”、“タイの原発建設計画の
見直し”、“EU域内の原発143基全てを対象に年内に安全性テストの実施”、
“ドイツでの反原発運動”、“アメリカ原発増設凍結”等が報じられており、
世界でも同様な動きが広がりつつあります。
環境事故という一定のリスクがある原子力発電方式を選択するか、環境事故のリスクは
少ないが二酸化炭素を排出し温暖化を進行する火力発電所を選択するか、大変難しい
状況になってきていると言えるでしょう。
以上の原子力発電に関連する各数値の出典は、2011年版原子力・エネルギー図面集
(電気事業連合会)及び電気事業連合会HPです。
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★2011年度環境社会検定試験催日程が東京商工会議所より公表されました
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・第10回試験日: 7月24日(日) 申込期間: 5/10~6/10(個人)
・第11回試験日:12月18日(日) 申込期間: 10/4~11/4(個人)
詳細は東京商工会議所HPをご覧ください。http://www.kentei.org/eco/index.html
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★エコ検定対策セミナー公開コース開催予定
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毎年好評を頂いてますが、前期は以下の2回のセミナーを実施します。
申込受付は4月下旬を予定しています。詳細はまたHPでご案内しますので少々
お待ちください。
・7月 9日(土) (エコ検定対策セミナー)
・7月16日(土) (模擬テスト&解説セミナー)いずれも東京開催です。
昨年の詳細はこちらです。 http://www.pdca.co.jp/ecoken/seminar/seminar_e1.html
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★2011度試験に向けて、通信教育のお申込みを受け付けています。
(Eラーニングは少々お待ちください)
http://www.pdca.co.jp/ecoken/correspondence.html
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株式会社 パデセア 代表取締役 黒柳要次
東京都千代田区麹町2-12-1 グレンパーク半蔵門303
TEL 03-5226-6721/FAX 03-5226-6723 email:info@pdca.co.jp
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e-mail info@pdca.co.jp
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東北地方太平洋沖地震により被災された方々には心からお見舞い申し上げます。
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今月は、原発事故の発生を受けて日本の原子力発電の現状について調べました。
2010年3月末現在、日本では54基の商業用原子力発電所が運転されています。
今後、14基(内2基建設中)の増設計画があります。しかし、東京電力の福島第1
原発の事故の後、この増設計画を再考する動きが出ています。
1.日本の原子力発電の運転状況
1966(昭和41)年に日本原子力発電の東海発電所が日本で初の営業運転を開始し、
1970(昭和45)年から1971(昭和46)年にかけて日本原子力発電の敦賀発電所1号機、
関西電力の美浜発電所1号機、及び東京電力の福島第1原子力発電所1号機が相次いで
営業運転に入りました。以来、2010年3月末現在、商業用の原子力発電所は54基、
合計出力4,885万kWが運転しています。
2009年度の原子力発電電力量は、日本の総発電力量の約29%を占めています。
これを電力会社別に見ると、原発比率が40%を超えているのは四国電力、九州電力、
関西電力の3電力、30%台は北海道電力、北陸電力の2電力、東京電力は約27%、
10%台は中国電力、中部電力の2電力となっています。沖縄には原発はありません。
日本で主として採用されている原子炉は軽水炉と呼ばれるものであり、軽水(注1)
を減速材・冷却材に兼用し、燃料には低濃縮ウランを用いるものです。
注1)軽水:普通の水のことをさす。これに対し重水素(水素原子に中性子が加わった
もの)に酸素が結合したものが重水であり、重水炉に用いられる。
軽水炉は世界の原子力発電の中心となっており、沸騰水型(BWR)と加圧水型(PWR)の
2種類に分類されます。BWRは原子炉の中で蒸気を発生させ、それにより直接タービン
を回す方式であり、PWRは原子炉で発生した高温高圧の水を蒸気発生器に送り、
そこで蒸気を作ってタービンを回す方式です。2010年3月末現在、日本ではBWR30基、
PWR24基が運転中です。事故があった東京電力福島第1発電所の1号機~6号機は
すべて沸騰水型(BWR)の原子炉です。その他の原子炉としては、高速増殖炉(FBR)が
あり、研究開発段階炉として(独)日本原子力研究開発機構の高速増殖の原型炉
(もんじゅ)が建設段階です。
2.世界の主要国との比較
世界主要国の原子力発電設備能力は次の通りです。(2010年1月1日現在)
日本はアメリカ、フランスに次ぎ、世界で3番目の設備能力を有しており、ロシア、
ドイツ、韓国がこれに続きます。以下の単位は万kWです。
アメリカ:10,534(104基)、フランス:6,602(59基)、日本:4,885 (54基)、
ロシア:2,319(27基)、ドイツ:2,151(17基)、韓国:1,772 (20基)、
全世界:38,916(432基)
また、総発電電力量に占める原子力発電の割合を見ると、日本はフランス、韓国に
次いで高い割合になっています。(2008年度時点)
フランス:77.1%、韓国:34%、日本:24%、ドイツ:23.5%、アメリカ:19.3%、
世界13.5%
3.日本の原子力発電計画
1970年代の2度の石油危機を経験した日本は、石油への依存を減らし、エネルギー源
の多様化を進めた結果、原子力や天然ガスの割合が増えました。
「京都議定書目標達成計画」では、“発電過程で二酸化炭素を排出しない原子力
発電については、地球温暖化対策の推進の上で極めて重要な位置を占めるものである。
今後も安全確保を大前提に、原子力発電の一層の活用を図る”として原発を推進して
きました。
平成22年6月に決定されたエネルギー基本計画(第二次改定)では、原子力発電の
推進を積極的に推進し「目指すべき姿」を次のように述べています。
“2020年までに、9基の原子力発電所の新増設を行うとともに、設備利用率約85%を
目指す。(現状:54基稼動、設備利用率:(2008年度)約60%、(1998年度)約84%)。
さらに、2030年までに、少なくとも14基以上の原子力発電所の新増設を行うとともに、
設備利用率約90%を目指していく。これらの実現により、水力等に加え、原子力を含む
ゼロ・エミッション電源比率を現状34%から2020年までに約50%以上、2030年までに
約70%とすることを目指す。”
具体的には2010年3月末現在、建設段階の原発は2基(電源開発大間、中国電力島根3号)、
着工準備中のものが12基あります。しかし、東京電力の福島第1原発の事故を受けて、
“電力各社の原発計画では建設作業を中断したり、計画そのものを先送りしたりする
動きが出ています。各地の原発建設が大きく後ずれする可能性が出てきた。”との
報道があります。日本におけるエネルギー政策の見直しは必至の状況となっています。
また、経済産業相は3月30日、“全国の原発で津波の被災に備えた緊急安全対策を
とるよう、電力会社に指示した。原子力安全・保安院が1カ月以内に対策の実施状況を
確認する”ことが報じられています。
一方海外でも、“中国の原発建設計画審査の一時停止”、“タイの原発建設計画の
見直し”、“EU域内の原発143基全てを対象に年内に安全性テストの実施”、
“ドイツでの反原発運動”、“アメリカ原発増設凍結”等が報じられており、
世界でも同様な動きが広がりつつあります。
環境事故という一定のリスクがある原子力発電方式を選択するか、環境事故のリスクは
少ないが二酸化炭素を排出し温暖化を進行する火力発電所を選択するか、大変難しい
状況になってきていると言えるでしょう。
以上の原子力発電に関連する各数値の出典は、2011年版原子力・エネルギー図面集
(電気事業連合会)及び電気事業連合会HPです。
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★2011年度環境社会検定試験催日程が東京商工会議所より公表されました
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・第10回試験日: 7月24日(日) 申込期間: 5/10~6/10(個人)
・第11回試験日:12月18日(日) 申込期間: 10/4~11/4(個人)
詳細は東京商工会議所HPをご覧ください。http://www.kentei.org/eco/index.html
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★エコ検定対策セミナー公開コース開催予定
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毎年好評を頂いてますが、前期は以下の2回のセミナーを実施します。
申込受付は4月下旬を予定しています。詳細はまたHPでご案内しますので少々
お待ちください。
・7月 9日(土) (エコ検定対策セミナー)
・7月16日(土) (模擬テスト&解説セミナー)いずれも東京開催です。
昨年の詳細はこちらです。 http://www.pdca.co.jp/ecoken/seminar/seminar_e1.html
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★2011度試験に向けて、通信教育のお申込みを受け付けています。
(Eラーニングは少々お待ちください)
http://www.pdca.co.jp/ecoken/correspondence.html
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株式会社 パデセア 代表取締役 黒柳要次
東京都千代田区麹町2-12-1 グレンパーク半蔵門303
TEL 03-5226-6721/FAX 03-5226-6723 email:info@pdca.co.jp
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