○○○パデセアメールマガジンVol.142○○○「ヒアリ等の外来生物」
2017/07/06 (Thu) 09:58
○○○パデセアメールマガジンVol.142○○○
ヒアリ等の外来生物対策の現状
~根絶するか、「お付き合い」するか?~
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特集:ヒアリ等の外来生物対策の現状
~根絶するか、「お付き合い」するか?~
本年6月13日、環境省は強い毒を持つ南米原産のアリ「ヒアリ」が
神戸港で水揚げされたコンテナから発見されたと発表しました。
その後の調査で、6月30日には名古屋港、7月4日には大阪港でも
ヒアリが発見されています。ヒアリの危険性については各社の報道に
ある通りであり、本稿ではこうした外来生物に対して法と行政が
どのように対応しているのかをご紹介しましょう。
◆ 外来生物法と特定外来生物
ヒアリのような外来生物に対処するための国内法が、「外来生物法」
です。外来生物法では、生態系、人の生命・身体、農林水産業へ被害を
及ぼす、又は及ぼすおそれがある外来生物(海外起源の外来種)を
「特定外来生物」に指定しています。「国内に住み着いて困っている
外来種」と「国内に住み着くと困りそうな外来種」が指定されている
訳です。
特定外来生物に指定された生物は、飼育、栽培、保管および運搬
すること、輸入すること、野外へ放つ・植える・蒔くこと、譲渡・
販売することなどが禁止されます。これに反した場合は罰金・
懲役刑が課される他、防除が必要になった場合はその原因となる
行為(野外に放つなど)をした者に国が防除費用を負担させる事も
あります。
現在特定外来生物として指定されているのは、90の種、15の属、
1つの科、そして3つの交雑生物です。代表的な特定外来生物には、
アライグマ、ジャワマングース、カミツキガメ、ウシガエル、
ブラックバス、ブルーギル、セアカゴケグモを含むゴケグモ属の
全種などが挙げられます。また動物だけでなく、熊本県内の川で
大発生し問題になっているブラジルチドメグサなどの植物も特定
外来生物に指定されています。
ヒアリは2005年に特定外来生物という制度が誕生した際、最初に
指定された生物の1つであり、その侵入・定着が以前から強く
警戒されていた事がわかります。
◆ なぜ外来生物は根絶されないのか?
では、外来種が国内に定着してしまった場合はどのような対策が
取られるのでしょうか。取るべき方策は大きく分けて2つに分け
られます。
1つは徹底的に駆除してその生物を根絶する事。もう1つは、
適度に間引きしながら長く「お付き合い」していく事です。意外な
ことに、外来種駆除の現場では「根絶」より「お付き合い」の方が
合理的な事が多々あります。
最大の問題は、駆除が進行するほどに駆除効率が下がることです。
駆除作戦を初めた当初は駆除すべき外来生物の生息数が多いので
大量の駆除が可能ですが、年月が経ち駆除が上手く行けば行くほどに、
罠や駆除者と外来種が遭遇する可能性は低下し、駆除数は減少して
いきます。1匹を駆除するのにかかるコストも増大します。
ある生物を根絶するには種を維持できる最低の個体数を下回る
まで駆除を行う必要があります。ある程度の群れを形成しないと
繁殖できない生物なら根絶は比較的容易と言えますが、問題視
されるような外来生物はそもそも繁殖力が旺盛で、「種を維持
できる個体数」が少ないのが一般的です。数が減った個体をなお
効率的に駆除できる何らかの「必殺技」がなければ、根絶は非常に
困難です。
たしかに「間引き」政策では外来生物の数を0にする事はできず、
毎年間引きのための予算がかかり続けます。しかし、なぜ外来
生物を駆除するかと言えば、農業への被害、人間生活への悪影響、
在来生物の捕食など、外来生物による何らかの被害が出ているから
です。実現困難な「根絶」を目指していたずらに予算を浪費する
よりも、現実的な「間引き」で数を抑制し、こうした被害を最低限に
抑える方が合理的な判断となる場合があります。
◆それでも根絶が必要な場合
しかし、それほど困難な「根絶」にあえて取り組まなければ
ならない場合もあります。外来種の悪影響があまりに大きく、
絶対的な制御が不可欠となった場合です。
根絶に成功した著名な例に沖縄のウリミバエがあります。
ゴーヤー等のウリ科植物を食害し農業に多大な悪影響を与える
このハエは、1972年から1993年にかけての防除事業により、
南西諸島から根絶されました。ここで大きな力を発揮したのが、
放射線による不妊化の技術でした。不妊化したハエを大量生産
して継続的にウリミバエの生息地域へと放飼します。野生の
ハエが不妊ハエを交尾相手に選んだ場合、そのカップルは次世代を
残すことができず、ハエはその数を減らしてゆきます。この方法の
優れている点は、野生ハエの数が減るほどに、野生ハエが
不妊ハエとカップルになる確率が上がる点です。「数が減ると
駆除が難しくなる」という、通常の駆除のジレンマを克服した
『必殺技』と言えましょう。
目下外来種の根絶に向けた取り組みを行っている例として、
奄美大島のマングース駆除事業があります。奄美大島のマングース
は農業被害もさることながら、アマミノクロウサギ等の固有生物の
被害が深刻であり、生態系を崩壊させかねない事から根絶が決定
されました。かつては島内に推定1万匹のフイリマングースが生息
していましたが、罠とマングース探索犬による地道な駆除が功を
奏し、2017年現在推定50匹にまで減少したと報道されています。
◆水際対策の重要性
いずれにせよ、一度定着してしまった外来生物を根絶するのは、
技術面はもちろん予算面でも容易なことではありません。
ウリミバエの防除・根絶に投入された予算は、職員の人件費を
除いて約204億円に登りました。奄美大島のマングース根絶事業には、
環境省から年間数千万~1億円の予算が10年以上にわたり投じられて
います。
環境保護において重視される考え方に「未然防止」があります。
公害等の環境汚染は、発生してから対処するよりも、発生しない
よう対策を取ったほうが結果的に掛かる費用が少なくて済む、
というものです。外来生物についても全く同じことが言えます。
関係者の努力によって、ヒアリの国内定着が防がれる事を願って
やみません。
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本年6月13日、環境省は強い毒を持つ南米原産のアリ「ヒアリ」が
神戸港で水揚げされたコンテナから発見されたと発表しました。
その後の調査で、6月30日には名古屋港、7月4日には大阪港でも
ヒアリが発見されています。ヒアリの危険性については各社の報道に
ある通りであり、本稿ではこうした外来生物に対して法と行政が
どのように対応しているのかをご紹介しましょう。
◆ 外来生物法と特定外来生物
ヒアリのような外来生物に対処するための国内法が、「外来生物法」
です。外来生物法では、生態系、人の生命・身体、農林水産業へ被害を
及ぼす、又は及ぼすおそれがある外来生物(海外起源の外来種)を
「特定外来生物」に指定しています。「国内に住み着いて困っている
外来種」と「国内に住み着くと困りそうな外来種」が指定されている
訳です。
特定外来生物に指定された生物は、飼育、栽培、保管および運搬
すること、輸入すること、野外へ放つ・植える・蒔くこと、譲渡・
販売することなどが禁止されます。これに反した場合は罰金・
懲役刑が課される他、防除が必要になった場合はその原因となる
行為(野外に放つなど)をした者に国が防除費用を負担させる事も
あります。
現在特定外来生物として指定されているのは、90の種、15の属、
1つの科、そして3つの交雑生物です。代表的な特定外来生物には、
アライグマ、ジャワマングース、カミツキガメ、ウシガエル、
ブラックバス、ブルーギル、セアカゴケグモを含むゴケグモ属の
全種などが挙げられます。また動物だけでなく、熊本県内の川で
大発生し問題になっているブラジルチドメグサなどの植物も特定
外来生物に指定されています。
ヒアリは2005年に特定外来生物という制度が誕生した際、最初に
指定された生物の1つであり、その侵入・定着が以前から強く
警戒されていた事がわかります。
◆ なぜ外来生物は根絶されないのか?
では、外来種が国内に定着してしまった場合はどのような対策が
取られるのでしょうか。取るべき方策は大きく分けて2つに分け
られます。
1つは徹底的に駆除してその生物を根絶する事。もう1つは、
適度に間引きしながら長く「お付き合い」していく事です。意外な
ことに、外来種駆除の現場では「根絶」より「お付き合い」の方が
合理的な事が多々あります。
最大の問題は、駆除が進行するほどに駆除効率が下がることです。
駆除作戦を初めた当初は駆除すべき外来生物の生息数が多いので
大量の駆除が可能ですが、年月が経ち駆除が上手く行けば行くほどに、
罠や駆除者と外来種が遭遇する可能性は低下し、駆除数は減少して
いきます。1匹を駆除するのにかかるコストも増大します。
ある生物を根絶するには種を維持できる最低の個体数を下回る
まで駆除を行う必要があります。ある程度の群れを形成しないと
繁殖できない生物なら根絶は比較的容易と言えますが、問題視
されるような外来生物はそもそも繁殖力が旺盛で、「種を維持
できる個体数」が少ないのが一般的です。数が減った個体をなお
効率的に駆除できる何らかの「必殺技」がなければ、根絶は非常に
困難です。
たしかに「間引き」政策では外来生物の数を0にする事はできず、
毎年間引きのための予算がかかり続けます。しかし、なぜ外来
生物を駆除するかと言えば、農業への被害、人間生活への悪影響、
在来生物の捕食など、外来生物による何らかの被害が出ているから
です。実現困難な「根絶」を目指していたずらに予算を浪費する
よりも、現実的な「間引き」で数を抑制し、こうした被害を最低限に
抑える方が合理的な判断となる場合があります。
◆それでも根絶が必要な場合
しかし、それほど困難な「根絶」にあえて取り組まなければ
ならない場合もあります。外来種の悪影響があまりに大きく、
絶対的な制御が不可欠となった場合です。
根絶に成功した著名な例に沖縄のウリミバエがあります。
ゴーヤー等のウリ科植物を食害し農業に多大な悪影響を与える
このハエは、1972年から1993年にかけての防除事業により、
南西諸島から根絶されました。ここで大きな力を発揮したのが、
放射線による不妊化の技術でした。不妊化したハエを大量生産
して継続的にウリミバエの生息地域へと放飼します。野生の
ハエが不妊ハエを交尾相手に選んだ場合、そのカップルは次世代を
残すことができず、ハエはその数を減らしてゆきます。この方法の
優れている点は、野生ハエの数が減るほどに、野生ハエが
不妊ハエとカップルになる確率が上がる点です。「数が減ると
駆除が難しくなる」という、通常の駆除のジレンマを克服した
『必殺技』と言えましょう。
目下外来種の根絶に向けた取り組みを行っている例として、
奄美大島のマングース駆除事業があります。奄美大島のマングース
は農業被害もさることながら、アマミノクロウサギ等の固有生物の
被害が深刻であり、生態系を崩壊させかねない事から根絶が決定
されました。かつては島内に推定1万匹のフイリマングースが生息
していましたが、罠とマングース探索犬による地道な駆除が功を
奏し、2017年現在推定50匹にまで減少したと報道されています。
◆水際対策の重要性
いずれにせよ、一度定着してしまった外来生物を根絶するのは、
技術面はもちろん予算面でも容易なことではありません。
ウリミバエの防除・根絶に投入された予算は、職員の人件費を
除いて約204億円に登りました。奄美大島のマングース根絶事業には、
環境省から年間数千万~1億円の予算が10年以上にわたり投じられて
います。
環境保護において重視される考え方に「未然防止」があります。
公害等の環境汚染は、発生してから対処するよりも、発生しない
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