パデセアメールマガジンVol.12 バリ島でのCOP13の成果
2008/01/09 (Wed) 12:00
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○○○ パデセアメールマガジンVol.12 ○○○
-バリ島でのCOP13の成果-
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は巻末をご覧ください。今回のテーマは、京都議定書以降の新しい枠組みづく
りが始った「バリ島でのCOP13の成果」です。
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地球温暖化対策の新たな枠組みづくりに向けた国連気候変動枠組条約(*1)
第13回締約国会議COP13(*2)が、昨年12月3日~15日にかけてインドネシア・
バリ島で開催され、187カ国から過去最多の1万1000人が参加しました。
日本からは鴨下環境大臣をはじめとして関係省庁(内閣官房、外務省、経済産
業省、環境省)の担当官が出席しました。
今回の会議は、京都議定書以降の温暖化防止の為の新たな枠組み作りをする上で
最初の大きな節目の会議でした。京都議定書を採択した10年前に比して、世界
各地で温暖化が原因と見られる異常気象や自然災害が相次ぎ、実効性のある
対策が求められていたからです。会議は予定を延長して協議が行なわれ、難航の
末に、新しい枠組みを作るため、何をどんな日程で議論するかという行程表の
「バリ・ロードマップ」が採択されました。
会議の内容について「日本政府代表団」発表資料及び新聞情報をもとにまとめて
みました。
会議は、先進国と途上国間の対立や先進国間の主導権争いの様相もあり、混迷
を深めました。主な各国の主張は次のとおりでした。
・(EU)温室効果ガスの数値目標の導入が必要。先進国が率先して削減を進め
るべき。
・(米国)数値目標の導入に反対。途上国も積極的削減を。
・(日本)ポスト京都には主要排出国がすべて参加。数値目標よりも交渉の合意
を優先。
・(中国など途上国)先進国は数値目標が必要。技術移転のための新たな仕組み
の創設。途上国は目標だけで義務は負わない。
会議では、温室効果ガスの排出量を削減するための数値目標を合意文書に盛り
込むかどうかが大きな焦点となりました。当初、バリ会議の合意文書案には
「先進国は2020年までに1990年比で排出量を25~40%削減。世界全体は50年まで
に00年比で半減以下にする」という数値目標を含んだ文言が入っていました。
これは国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書を参考に導き
出した数値です。これに米国は激しく反発。一方欧州連合(EU)は数値目標の
設定に強くこだわりました。両者の対立で、バリ会議は空中分解の恐れさえあり
ましたが、結局EUが態度を軟化させたため、数値目標は削除されました。
最終的に各国が合意した行程表「バリ・ロードマップ」では、京都議定書以降
の内容と交渉日程が示されました。行程表では「温室効果ガスの排出量を減らす
機会を失えば、温暖化による深刻な影響が出る」と警告し、早急な取組みを世界
各国に求めました。主な内容は次のとおりです。
1.温室効果ガス削減とその手法
・具体的な排出削減目標値の記載は見送られた。「IPCCの報告書が示す目標
を設ける」として今後の検討課題とした。
・京都議定書で削減義務を負っていなかった途上国に削減努力を求めることを明記。
米国に次ぐ温室効果ガスの排出国である中国やインドなども排出削減に努めるこ
とになる。
・排出削減の手法として日本の産業界が強く求めていたセクターアプローチ(*3)
が盛り込まれた。
2.発展途上国で起きる温暖化の被害を軽減するための支援及び途上国で温室効果
ガスの排出量を減らす技術の移転。
・発展途上国への支援に多くのスペースが割かれた。途上国の支援の柱は資金援助
と技術移転。
・資金援助では洪水や干ばつなどの被害を軽減するための基金の設置。
・技術移転はこれまで思うように進まず途上国側から不満の声が上がっていた。
移転を加速するため作業部会を設けて検討を進める。
3.ポスト京都議定書の交渉期限
・交渉期限は09年と明記。具体的には09年末にデンマークで開かれる条約締約国
会議 (COP15)で合意。
・08年4月までにすべての条約国が参加する新たな作業部会を設置し検討を開始。
バリ会議により主要排出国がすべて参加する枠組みができたことで、世界は新たな
一歩を踏み出しました。2008年に入り、バリ・ロードマップに示された枠組み
作りに向けて具体的な議論がはじまることでしょう。世界の動きは変わってくる
ものと思います。すでに以下のような動きがあります。
【オーストラリア】政権交代により昨年12月3日に調印・批准しました。
【米国】今年秋の大統領選の結果によっては環境施策の大幅な転換があることも
予想されています。「あと1年余りで米国は大きく変わる。」バリ会議の会場に姿
を見せた前米国副大統領のアル・ゴア氏は各国交渉団にそう強調しました。
【日本】「福田首相は1月下旬にスイス・ダボスで開催される世界経済フォーラム
年次総会(ダボス会議)に出席し、温室効果ガスについて、日本自身の中長期的な
削減目標を設定する方針を表明する意向を固めた。具体的な目標数値は7月の
北海道洞爺湖サミットまでに詰める。日本政府は、国際競争力を懸念する産業界への
配慮などから目標設定に消極的だったが、ポスト京都議定書の枠組みづくりに指導力
を発揮するため、方針を転換した。」(12月28日新聞報道)。
(*1)国連気候変動枠組条約:1992年の地球サミットで制定された地球温暖化
防止を目的とした基本的な条約。京都議定書はこの条約に基づく具体的な温室
効果ガスの削減計画の枠組み。
(*2)COP:条約を結んだ締約国による会議を意味する「conference of the
parties」の頭文字からとった略語。国連気候変動枠組条約のCOPは、94年の
条約発効後毎年開催されている。97年のCOP3は京都市で開催され、京都議定書が
採択された。現在、条約の締約国は192カ国・地域。
(*3)セクターアプローチ:京都議定書にはない新しい手法で、鉄鋼やセメント
など国を超えて産業分野別に削減を進めるという手法。
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株式会社 パデセア 代表取締役 黒柳要次
東京都中央区新川1-22-12ニッテイビル4F
TEL 03-5541-6281 FAX 03-5541-1166 email:info@pdca.co.jp
2008年は京都議定書の削減目標達成期間の最初の年になります。
本メルマガでも環境に関する様々な動きを追いかけていきたいと思います。
本年もよろしくお願いします。
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地球温暖化対策の新たな枠組みづくりに向けた国連気候変動枠組条約(*1)
第13回締約国会議COP13(*2)が、昨年12月3日~15日にかけてインドネシア・
バリ島で開催され、187カ国から過去最多の1万1000人が参加しました。
日本からは鴨下環境大臣をはじめとして関係省庁(内閣官房、外務省、経済産
業省、環境省)の担当官が出席しました。
今回の会議は、京都議定書以降の温暖化防止の為の新たな枠組み作りをする上で
最初の大きな節目の会議でした。京都議定書を採択した10年前に比して、世界
各地で温暖化が原因と見られる異常気象や自然災害が相次ぎ、実効性のある
対策が求められていたからです。会議は予定を延長して協議が行なわれ、難航の
末に、新しい枠組みを作るため、何をどんな日程で議論するかという行程表の
「バリ・ロードマップ」が採択されました。
会議の内容について「日本政府代表団」発表資料及び新聞情報をもとにまとめて
みました。
会議は、先進国と途上国間の対立や先進国間の主導権争いの様相もあり、混迷
を深めました。主な各国の主張は次のとおりでした。
・(EU)温室効果ガスの数値目標の導入が必要。先進国が率先して削減を進め
るべき。
・(米国)数値目標の導入に反対。途上国も積極的削減を。
・(日本)ポスト京都には主要排出国がすべて参加。数値目標よりも交渉の合意
を優先。
・(中国など途上国)先進国は数値目標が必要。技術移転のための新たな仕組み
の創設。途上国は目標だけで義務は負わない。
会議では、温室効果ガスの排出量を削減するための数値目標を合意文書に盛り
込むかどうかが大きな焦点となりました。当初、バリ会議の合意文書案には
「先進国は2020年までに1990年比で排出量を25~40%削減。世界全体は50年まで
に00年比で半減以下にする」という数値目標を含んだ文言が入っていました。
これは国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書を参考に導き
出した数値です。これに米国は激しく反発。一方欧州連合(EU)は数値目標の
設定に強くこだわりました。両者の対立で、バリ会議は空中分解の恐れさえあり
ましたが、結局EUが態度を軟化させたため、数値目標は削除されました。
最終的に各国が合意した行程表「バリ・ロードマップ」では、京都議定書以降
の内容と交渉日程が示されました。行程表では「温室効果ガスの排出量を減らす
機会を失えば、温暖化による深刻な影響が出る」と警告し、早急な取組みを世界
各国に求めました。主な内容は次のとおりです。
1.温室効果ガス削減とその手法
・具体的な排出削減目標値の記載は見送られた。「IPCCの報告書が示す目標
を設ける」として今後の検討課題とした。
・京都議定書で削減義務を負っていなかった途上国に削減努力を求めることを明記。
米国に次ぐ温室効果ガスの排出国である中国やインドなども排出削減に努めるこ
とになる。
・排出削減の手法として日本の産業界が強く求めていたセクターアプローチ(*3)
が盛り込まれた。
2.発展途上国で起きる温暖化の被害を軽減するための支援及び途上国で温室効果
ガスの排出量を減らす技術の移転。
・発展途上国への支援に多くのスペースが割かれた。途上国の支援の柱は資金援助
と技術移転。
・資金援助では洪水や干ばつなどの被害を軽減するための基金の設置。
・技術移転はこれまで思うように進まず途上国側から不満の声が上がっていた。
移転を加速するため作業部会を設けて検討を進める。
3.ポスト京都議定書の交渉期限
・交渉期限は09年と明記。具体的には09年末にデンマークで開かれる条約締約国
会議 (COP15)で合意。
・08年4月までにすべての条約国が参加する新たな作業部会を設置し検討を開始。
バリ会議により主要排出国がすべて参加する枠組みができたことで、世界は新たな
一歩を踏み出しました。2008年に入り、バリ・ロードマップに示された枠組み
作りに向けて具体的な議論がはじまることでしょう。世界の動きは変わってくる
ものと思います。すでに以下のような動きがあります。
【オーストラリア】政権交代により昨年12月3日に調印・批准しました。
【米国】今年秋の大統領選の結果によっては環境施策の大幅な転換があることも
予想されています。「あと1年余りで米国は大きく変わる。」バリ会議の会場に姿
を見せた前米国副大統領のアル・ゴア氏は各国交渉団にそう強調しました。
【日本】「福田首相は1月下旬にスイス・ダボスで開催される世界経済フォーラム
年次総会(ダボス会議)に出席し、温室効果ガスについて、日本自身の中長期的な
削減目標を設定する方針を表明する意向を固めた。具体的な目標数値は7月の
北海道洞爺湖サミットまでに詰める。日本政府は、国際競争力を懸念する産業界への
配慮などから目標設定に消極的だったが、ポスト京都議定書の枠組みづくりに指導力
を発揮するため、方針を転換した。」(12月28日新聞報道)。
(*1)国連気候変動枠組条約:1992年の地球サミットで制定された地球温暖化
防止を目的とした基本的な条約。京都議定書はこの条約に基づく具体的な温室
効果ガスの削減計画の枠組み。
(*2)COP:条約を結んだ締約国による会議を意味する「conference of the
parties」の頭文字からとった略語。国連気候変動枠組条約のCOPは、94年の
条約発効後毎年開催されている。97年のCOP3は京都市で開催され、京都議定書が
採択された。現在、条約の締約国は192カ国・地域。
(*3)セクターアプローチ:京都議定書にはない新しい手法で、鉄鋼やセメント
など国を超えて産業分野別に削減を進めるという手法。
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