◇◇◇パデセアメールマガジンVol.183◇◇◇「温室効果ガス『実質ゼロ』」
2020/12/04 (Fri) 12:00
◇◇◇パデセアメールマガジンVol.183◇◇◇
温室効果ガス排出「実質ゼロ」とは?
~2050年達成を目標に~
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特集:温室効果ガス排出「実質ゼロ」とは?
~2050年達成を目標に~
2020年10月26日、菅総理大臣は所信表明演説の中で「2050年まで
に温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする」と発表しました。
パリ協定では、世界の平均気温を産業革命前と比べ+1.5度以内
に収めるには、2050年頃までに世界の二酸化炭素の排出量を実質
ゼロにする必要があるとされており、既に120カ国以上の国々が
これに賛同しています。日本も遅ればせながらこれに同調した形
です。米国では「2050年までに実質ゼロ」を掲げるバイデン氏が
大統領選で当選を確実とし、中国でも9月に「2060年までに実質
ゼロ」との方針が公表されるなど、実質ゼロ化の表明は続々と
行われています。
ところで、「実質ゼロ」とはどのような状態を指すのでしょうか?
◆「実質ゼロ」とは?
温室効果ガスの発生を可能な限り減らした社会において、エネ
ルギーの主力は再エネを主な発電方法とする電気と、水素になる
と考えられます。しかし、再エネ化を徹底した社会においても、
化石燃料を完全に排除するのは現実的ではなく、ある程度のCO2の
発生はやむを得ないと考えられています。
加えて、温室効果ガスはCO2だけではありません。例えば、
亜酸化窒素(N2O)は二酸化炭素の約300倍の温室効果を発揮する
温室効果ガスです。田畑に施肥された窒素肥料のうち約1/3は
短時間で大気中に放出され、その5~20%は亜酸化窒素であると
言われています。
IPCCの定義では、「実質ゼロ」とは、人為的に排出された温室
効果ガスの量と、大気中から人為的に除去された温室効果ガスの
量が釣り合い、大気中の温室効果ガスの濃度が人為的に増加しない
状態を指します。人為的な除去とは、大気中の温室効果ガス(基本
的には二酸化炭素)を地下・陸上・海中あるいは製品中などに貯留
する人為的な活動を指します。例えば植林で森を増やす事はCO2を
陸域に固定する事になりますが、人為的な活動と関わらず森林が
吸収しているCO2は「実質ゼロ」の計算には含まれません。
CO2の排出量実質ゼロを目指している国と、温室効果ガス全般の
排出量実質ゼロを目指している国がありますが、日本はより難しい
後者です。世界全体で温室効果ガス排出量の実質ゼロ化が達成でき
れば、地球温暖化に歯止めをかけ、長期的には徐々に平均気温が
低下することも期待できます。
◆「実質ゼロ」化に向けた技術
しかし、省エネを徹底し、電気と水素へのエネルギー転換を推し
進めるだけでは、排出量のゼロ化は実現できません。CO2の人為的
な除去、具体的には「工場・発電所等で発生した二酸化炭素を回収
する」など、排出された温室効果ガス自体を回収する措置が必要
です。
CCS(Carbon dioxide Capture and Storage / 二酸化炭素回収
・貯留)とは、工場や発電所で発生した二酸化炭素を他の気体から
分離し、地中深くに注入・貯留する技術です。化石燃料の燃焼に
より発生した二酸化炭素を地中に戻すことで、事実上のカーボン
ニュートラルとなります。
また、植物から製造したバイオマス燃料を燃焼する発電所等で
CCSを行えば、エネルギーを生み出しつつCO2発生量をマイナスに
する事も可能です。
日本では苫小牧市で実証実験が行われ、2016年~2019年にかけて
製油所で発生する二酸化炭素30万tを海底地下に圧入する事に成功
しました。現在は圧入したCO2の漏洩や、その他の環境への影響が
発生しないか監視が続けられています。
CCSを更に進展させたのがCCU(Carbon dioxide Capture and
Utilization / 二酸化炭素回収有効利用)です。これは二酸化炭素
を回収するだけでなく、そこから石油代替燃料や化学燃料などの
有価物を生産するなど、二酸化炭素自体を有効に活用する技術
です。活用方法としては、植物プランクトンを栽培してバイオ
燃料を生成する、コンクリートの原料にする、といった方法が
検討されています。CO2を油田に圧入することで石油を地中から
絞り出す技術は米国を中心に実用化されています。
◆実質ゼロへの高い壁
このように、「どのような技術を使えば2050年温室効果ガス
排出量実質ゼロを確立できるか」という目星はついています。
目下の課題はコストです。
現状では、水素燃料のコストが高く、化石燃料に価格面で全く
太刀打ちできません。CCS・CCUについても、排出ガスから二酸化
炭素だけを分離する工程のコストがかさむため、商業化はまだ
遠い状況です。
ここ20年ほどで太陽光パネルの価格が大幅に下がったことから
も分かるように、先進技術は普及するにつれて大幅に価格の下落
が進む傾向にあります。技術開発による価格下落と、化石燃料
への課税などを組み合わせる事で、商業化可能な価格になること
が想定されます。
いずれにせよ、「2050年実質ゼロ排出」を魔法のように実現
する技術はありません。「実質ゼロ」とは、民間企業・個人
の省エネを積み重ね、なお足りない部分を新技術で補う事で
ようやく達成できる、極めて高い目標なのです。
◆参考
経済産業省 第3回 グリーンイノベーション戦略推進会議 配布資料
https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/green_innovation/gi_003.html
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~2050年達成を目標に~
2020年10月26日、菅総理大臣は所信表明演説の中で「2050年まで
に温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする」と発表しました。
パリ協定では、世界の平均気温を産業革命前と比べ+1.5度以内
に収めるには、2050年頃までに世界の二酸化炭素の排出量を実質
ゼロにする必要があるとされており、既に120カ国以上の国々が
これに賛同しています。日本も遅ればせながらこれに同調した形
です。米国では「2050年までに実質ゼロ」を掲げるバイデン氏が
大統領選で当選を確実とし、中国でも9月に「2060年までに実質
ゼロ」との方針が公表されるなど、実質ゼロ化の表明は続々と
行われています。
ところで、「実質ゼロ」とはどのような状態を指すのでしょうか?
◆「実質ゼロ」とは?
温室効果ガスの発生を可能な限り減らした社会において、エネ
ルギーの主力は再エネを主な発電方法とする電気と、水素になる
と考えられます。しかし、再エネ化を徹底した社会においても、
化石燃料を完全に排除するのは現実的ではなく、ある程度のCO2の
発生はやむを得ないと考えられています。
加えて、温室効果ガスはCO2だけではありません。例えば、
亜酸化窒素(N2O)は二酸化炭素の約300倍の温室効果を発揮する
温室効果ガスです。田畑に施肥された窒素肥料のうち約1/3は
短時間で大気中に放出され、その5~20%は亜酸化窒素であると
言われています。
IPCCの定義では、「実質ゼロ」とは、人為的に排出された温室
効果ガスの量と、大気中から人為的に除去された温室効果ガスの
量が釣り合い、大気中の温室効果ガスの濃度が人為的に増加しない
状態を指します。人為的な除去とは、大気中の温室効果ガス(基本
的には二酸化炭素)を地下・陸上・海中あるいは製品中などに貯留
する人為的な活動を指します。例えば植林で森を増やす事はCO2を
陸域に固定する事になりますが、人為的な活動と関わらず森林が
吸収しているCO2は「実質ゼロ」の計算には含まれません。
CO2の排出量実質ゼロを目指している国と、温室効果ガス全般の
排出量実質ゼロを目指している国がありますが、日本はより難しい
後者です。世界全体で温室効果ガス排出量の実質ゼロ化が達成でき
れば、地球温暖化に歯止めをかけ、長期的には徐々に平均気温が
低下することも期待できます。
◆「実質ゼロ」化に向けた技術
しかし、省エネを徹底し、電気と水素へのエネルギー転換を推し
進めるだけでは、排出量のゼロ化は実現できません。CO2の人為的
な除去、具体的には「工場・発電所等で発生した二酸化炭素を回収
する」など、排出された温室効果ガス自体を回収する措置が必要
です。
CCS(Carbon dioxide Capture and Storage / 二酸化炭素回収
・貯留)とは、工場や発電所で発生した二酸化炭素を他の気体から
分離し、地中深くに注入・貯留する技術です。化石燃料の燃焼に
より発生した二酸化炭素を地中に戻すことで、事実上のカーボン
ニュートラルとなります。
また、植物から製造したバイオマス燃料を燃焼する発電所等で
CCSを行えば、エネルギーを生み出しつつCO2発生量をマイナスに
する事も可能です。
日本では苫小牧市で実証実験が行われ、2016年~2019年にかけて
製油所で発生する二酸化炭素30万tを海底地下に圧入する事に成功
しました。現在は圧入したCO2の漏洩や、その他の環境への影響が
発生しないか監視が続けられています。
CCSを更に進展させたのがCCU(Carbon dioxide Capture and
Utilization / 二酸化炭素回収有効利用)です。これは二酸化炭素
を回収するだけでなく、そこから石油代替燃料や化学燃料などの
有価物を生産するなど、二酸化炭素自体を有効に活用する技術
です。活用方法としては、植物プランクトンを栽培してバイオ
燃料を生成する、コンクリートの原料にする、といった方法が
検討されています。CO2を油田に圧入することで石油を地中から
絞り出す技術は米国を中心に実用化されています。
◆実質ゼロへの高い壁
このように、「どのような技術を使えば2050年温室効果ガス
排出量実質ゼロを確立できるか」という目星はついています。
目下の課題はコストです。
現状では、水素燃料のコストが高く、化石燃料に価格面で全く
太刀打ちできません。CCS・CCUについても、排出ガスから二酸化
炭素だけを分離する工程のコストがかさむため、商業化はまだ
遠い状況です。
ここ20年ほどで太陽光パネルの価格が大幅に下がったことから
も分かるように、先進技術は普及するにつれて大幅に価格の下落
が進む傾向にあります。技術開発による価格下落と、化石燃料
への課税などを組み合わせる事で、商業化可能な価格になること
が想定されます。
いずれにせよ、「2050年実質ゼロ排出」を魔法のように実現
する技術はありません。「実質ゼロ」とは、民間企業・個人
の省エネを積み重ね、なお足りない部分を新技術で補う事で
ようやく達成できる、極めて高い目標なのです。
◆参考
経済産業省 第3回 グリーンイノベーション戦略推進会議 配布資料
https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/green_innovation/gi_003.html
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