◇◇◇パデセアメールマガジンVol.184◇◇◇「カーボンプライシング」
2021/01/06 (Wed) 12:00
◇◇◇パデセアメールマガジンVol.184◇◇◇
菅政権で検討「カーボンプライシング」とは?
~炭素税と排出量取引~
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本メルマガは、弊社ホームページからのお申し込みがあった方や
当社メンバーと名刺交換をさせて頂いた方に送付しています。
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○環境法令検定対策オンラインセミナー まもなく受付終了!
https://ecohourei.jp/seminar-submit/
○環境法令検定公式問題集 2020~2021年秋冬版 発売中
9月検定の問題も収録!
https://www.ecohourei.jp/textbook/#mondaishu
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特集:菅政権で検討「カーボンプライシング」とは?
~炭素税と排出量取引~
菅政権は、昨年9月の就任後意欲的な環境政策を打ち出して
います。その最大のものは「2050年の温室効果ガス排出実質ゼロ
化」の表明で、2020年12月25日にはその道筋を示した「2050年
カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を公表しました。
また12月11日には、カーボンプライシング導入の可能性を検討
する有識者委員会を再開するとの報道が行われています。今回は
この「カーボンプライシング」とはどのような制度なのかをご紹介
します。
◆カーボンプライシングとは?
カーボンプライシングは日本語訳すれば「炭素の価格付け」
となります。「二酸化炭素の排出」に価格をつけ、企業または
個人は排出した二酸化炭素の量に比例した金額を払わなければ
ならない、というものです。CO2排出のコストや、排出量削減の
費用対効果を「見える化」することで、企業・個人に温室効果
ガス削減を促す効果が期待されています。
具体的には、「炭素税」と「排出量取引」が主な方法となり
ます。
○炭素税:化石燃料に対し、二酸化炭素の排出量に応じて税を
課すものです。「二酸化炭素排出1トン当たり○円」のように
税率を定めることで、CO2排出量の多い石炭等は税率が高くなり、
排出量の少ない天然ガス等は税率が低くなります。高炭素な燃料
の使用に高額な税を課すことで、低炭素な燃料や、自然エネルギー
への転換を促します。
○排出量取引:企業等が排出可能な二酸化炭素の量を国が定め、
これを超過した企業は下回った企業から「排出可能な量」の枠
を購入する、という制度です。国が温室効果ガスの排出量上限
を設定するため、炭素税と比べより確実な削減が可能となり
ます。
例えば、年間10,000tのCO2を排出可能なA社とB社が存在し、
A社は排出削減努力の結果8,000tまで排出量を減らし、B社は
12,000t排出してしまいました。この場合、B社はA社から2,000t
ぶんの「排出可能な量(排出量)」を購入する事で、削減義務
を満たすことができます。
売買される排出量の価格は需要と供給により変動するため、
排出量の上限が厳しくなり、排出量購入の需要が増すほどに
価格が高まります。温室効果ガスの排出に市場価格をつけて
「見える化」し、経済原理によって温室効果ガスを減らすのが
排出量取引の目的です。
カーボンプライシングの導入は世界的に進められており、
世界銀行によれば42の国と25の地方政府が、なんらかのカー
ボンプライシングを既に導入しています(2017年)。全体的には
炭素税を導入している国・地域が多いですが、EU、韓国、中国
などでは排出量取引制度が導入されています。
◆炭素税の現状
実は炭素税は日本ではすでに導入されており、化石燃料には
そのCO2排出量に比例した「地球温暖化対策のための税」が
課せられています。しかし、現状その税率はCO2排出1トンに
つき298円、ガソリン1Lに換算するとわずか0.76円と、諸外国
と比べ極めて低く設定されています。他の炭素税導入国では、
アイルランドは約2,000円/tCO2、フィンランドは約8,000円/
tCO2、スイスやフランスでは10,000円/tCO2前後が課税されて
います。
また日本では地球温暖化対策のための税のほか、燃料の種類
ごとに、ガソリン税、軽油引取税、航空機燃料税、LPGに対する
石油ガス税などが設定されています。ガソリンの場合、CO2排出
量1トンあたりの税率は以下のようになっており、事実上ガソ
リン税がその税負担の大半を担っています。
・ガソリン税:23,173円
・石油石炭税:779円
・地球温暖化対策のための税:289円
現在の税制では、ガソリンや軽油といった交通手段向けの
燃料に比較的高い税が掛けられる一方、石炭・重油・天然ガス
などの産業用途の燃料は税率が低く、「高炭素燃料ほど税率を
高くする事で、低炭素燃料に誘導する」という炭素税の目的が
機能しているとは言い難い状況です。
◆排出量取引制度の現状
排出量取引制度は、東京都と埼玉県において2010年から導入
されています。
東京都では年間エネルギー消費が原油換算1,500kL以上の大規模
事業所を対象としており、対象事業所数は約1,300件。都内の業務
・産業部門のCO2排出量の約40%が本制度の対象事業所から排出され
ています。
2010~2014年度の第1計画期間は、オフィスビル等8%、工場等
6%の削減義務が課されましたが、全事業所がこの目標を達成し
ました。2015~2019年度の第2計画期間はオフィスビル等17%・
工場等15%、2020~2024年度の第3計画期間はオフィスビル等
27%、工場等25%の削減義務が課されます。
埼玉県制度は東京都とほぼ同一の仕組みとなっており、こちら
は県内600の大規模事業所が対象となっています。
いずれも大規模事業所を対象としていますが、排出量取引制度
は毎年の温室効果ガス排出量を正確に把握する必要があるため、
小規模な事業所に義務付けるのは難しい性質があります。
なお弊社は、東京都と埼玉県の温室効果ガス排出量登録検証
機関です。都・県制度の対象事業所は排出量について第三者機関
による検証を受ける必要がありますが、弊社ではこの第三者検証
を請け負っております。
2018年3月に最終の取りまとめを行った環境省の「カーボン
プライシングのあり方に関する検討会」では、排出量取引は
小規模事業所を対象にできない点を考慮し、カーボンプライ
シング導入の際の手法は「炭素税」か「排出量取引+炭素税」
のいずれかとしています。再開される有識者委員会でも、これを
軸に議論が行われることが想定されます。
どの形を取るにせよ、温室効果ガスの削減が一層求められる
時代が近づいている事は間違いないでしょう。
◆参考
「カーボンプライシングのあり方に関する検討会」取りまとめ
https://www.env.go.jp/earth/cp_report.pdf
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特集:菅政権で検討「カーボンプライシング」とは?
~炭素税と排出量取引~
菅政権は、昨年9月の就任後意欲的な環境政策を打ち出して
います。その最大のものは「2050年の温室効果ガス排出実質ゼロ
化」の表明で、2020年12月25日にはその道筋を示した「2050年
カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を公表しました。
また12月11日には、カーボンプライシング導入の可能性を検討
する有識者委員会を再開するとの報道が行われています。今回は
この「カーボンプライシング」とはどのような制度なのかをご紹介
します。
◆カーボンプライシングとは?
カーボンプライシングは日本語訳すれば「炭素の価格付け」
となります。「二酸化炭素の排出」に価格をつけ、企業または
個人は排出した二酸化炭素の量に比例した金額を払わなければ
ならない、というものです。CO2排出のコストや、排出量削減の
費用対効果を「見える化」することで、企業・個人に温室効果
ガス削減を促す効果が期待されています。
具体的には、「炭素税」と「排出量取引」が主な方法となり
ます。
○炭素税:化石燃料に対し、二酸化炭素の排出量に応じて税を
課すものです。「二酸化炭素排出1トン当たり○円」のように
税率を定めることで、CO2排出量の多い石炭等は税率が高くなり、
排出量の少ない天然ガス等は税率が低くなります。高炭素な燃料
の使用に高額な税を課すことで、低炭素な燃料や、自然エネルギー
への転換を促します。
○排出量取引:企業等が排出可能な二酸化炭素の量を国が定め、
これを超過した企業は下回った企業から「排出可能な量」の枠
を購入する、という制度です。国が温室効果ガスの排出量上限
を設定するため、炭素税と比べより確実な削減が可能となり
ます。
例えば、年間10,000tのCO2を排出可能なA社とB社が存在し、
A社は排出削減努力の結果8,000tまで排出量を減らし、B社は
12,000t排出してしまいました。この場合、B社はA社から2,000t
ぶんの「排出可能な量(排出量)」を購入する事で、削減義務
を満たすことができます。
売買される排出量の価格は需要と供給により変動するため、
排出量の上限が厳しくなり、排出量購入の需要が増すほどに
価格が高まります。温室効果ガスの排出に市場価格をつけて
「見える化」し、経済原理によって温室効果ガスを減らすのが
排出量取引の目的です。
カーボンプライシングの導入は世界的に進められており、
世界銀行によれば42の国と25の地方政府が、なんらかのカー
ボンプライシングを既に導入しています(2017年)。全体的には
炭素税を導入している国・地域が多いですが、EU、韓国、中国
などでは排出量取引制度が導入されています。
◆炭素税の現状
実は炭素税は日本ではすでに導入されており、化石燃料には
そのCO2排出量に比例した「地球温暖化対策のための税」が
課せられています。しかし、現状その税率はCO2排出1トンに
つき298円、ガソリン1Lに換算するとわずか0.76円と、諸外国
と比べ極めて低く設定されています。他の炭素税導入国では、
アイルランドは約2,000円/tCO2、フィンランドは約8,000円/
tCO2、スイスやフランスでは10,000円/tCO2前後が課税されて
います。
また日本では地球温暖化対策のための税のほか、燃料の種類
ごとに、ガソリン税、軽油引取税、航空機燃料税、LPGに対する
石油ガス税などが設定されています。ガソリンの場合、CO2排出
量1トンあたりの税率は以下のようになっており、事実上ガソ
リン税がその税負担の大半を担っています。
・ガソリン税:23,173円
・石油石炭税:779円
・地球温暖化対策のための税:289円
現在の税制では、ガソリンや軽油といった交通手段向けの
燃料に比較的高い税が掛けられる一方、石炭・重油・天然ガス
などの産業用途の燃料は税率が低く、「高炭素燃料ほど税率を
高くする事で、低炭素燃料に誘導する」という炭素税の目的が
機能しているとは言い難い状況です。
◆排出量取引制度の現状
排出量取引制度は、東京都と埼玉県において2010年から導入
されています。
東京都では年間エネルギー消費が原油換算1,500kL以上の大規模
事業所を対象としており、対象事業所数は約1,300件。都内の業務
・産業部門のCO2排出量の約40%が本制度の対象事業所から排出され
ています。
2010~2014年度の第1計画期間は、オフィスビル等8%、工場等
6%の削減義務が課されましたが、全事業所がこの目標を達成し
ました。2015~2019年度の第2計画期間はオフィスビル等17%・
工場等15%、2020~2024年度の第3計画期間はオフィスビル等
27%、工場等25%の削減義務が課されます。
埼玉県制度は東京都とほぼ同一の仕組みとなっており、こちら
は県内600の大規模事業所が対象となっています。
いずれも大規模事業所を対象としていますが、排出量取引制度
は毎年の温室効果ガス排出量を正確に把握する必要があるため、
小規模な事業所に義務付けるのは難しい性質があります。
なお弊社は、東京都と埼玉県の温室効果ガス排出量登録検証
機関です。都・県制度の対象事業所は排出量について第三者機関
による検証を受ける必要がありますが、弊社ではこの第三者検証
を請け負っております。
2018年3月に最終の取りまとめを行った環境省の「カーボン
プライシングのあり方に関する検討会」では、排出量取引は
小規模事業所を対象にできない点を考慮し、カーボンプライ
シング導入の際の手法は「炭素税」か「排出量取引+炭素税」
のいずれかとしています。再開される有識者委員会でも、これを
軸に議論が行われることが想定されます。
どの形を取るにせよ、温室効果ガスの削減が一層求められる
時代が近づいている事は間違いないでしょう。
◆参考
「カーボンプライシングのあり方に関する検討会」取りまとめ
https://www.env.go.jp/earth/cp_report.pdf
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