◇パデセアメールマガジンVol.238◇「座礁資産」
2025/09/05 (Fri) 12:00
◇パデセアメールマガジンVol.238◇座礁資産
~化石燃料はいつまで掘れるか~
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申込期間は9/27まで!
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環境法令検定「注目の法改正・新法」で出題する法律を公開中!
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特集:座礁資産 ~化石燃料はいつまで掘れるか~
くろぐろとした煙を吐き、大海原を進む蒸気船。蒸気船は他の
船を悠々と追い越し、乗客に快適な旅を提供しています。しかし
船が進む先には、暗礁がある事が分かっています。その暗礁は
間違いなくあることは分かっていますが、どこにあるのかはまだ
見えません。
化石燃料を燃やして走るこの蒸気船は、近い将来に「座礁」する
ことが宿命付けられています。しかし、蒸気船は素早く快適なので、
多くの人々はお金を出して蒸気船に乗り続けています。
「座礁資産」とは、いわばこの蒸気船のような資産です。
◆座礁資産とは?
座礁資産(StrandedAssets)とは、イギリスのNGOカーボン
トラッカー・イニシアティブ(以下カーボントラッカー)が、2011年
に公表した報告書「UnburnableCarbon」の中で提唱した概念です。
カーボントラッカーは座礁資産を「低炭素経済への移行に伴う変化
の結果として、経済的耐用年数が終了する前のある時点で、経済的
リターンを得ることができなくなった資産」、より簡単に言えば
「エネルギー転換に関連する変化の結果として予想よりも価値が
低いことが判明した資産」としています。
化石燃料は目下重要なエネルギー源であり、その採掘は莫大な
利益を生み出しています。しかし、地球の年間平均気温の上昇を
抑制するためには、人類が排出できる二酸化炭素の量には限りが
あります。つまり、かなりの量の化石燃料を将来的に地中に埋蔵
したままにしておく必要があります。これは逆に言うと、世界が
地球温暖化の防止を目的に動いている限り、化石燃料の採掘権の
かなりの部分は、将来的になんの価値もなくなってしまう事を
意味します。
具体的にどれくらいの化石燃料を地中に残す必要があるのか、
国際エネルギー機関(IEA)が試算しています。パリ協定の2℃目標を
達成するためには、今後人類が使用できる化石燃料は地球に存在
する化石燃料の3分の1であり、残り3分の2は座礁資産になると
しています。
座礁資産は化石燃料そのものだけにとどまりません。化石燃料を
探査・開発する探査船や採掘リグなどの資産、石油の生産・加工
施設、パイプライン・タンカーなどの流通インフラ、更には化石
燃料を燃焼する設備も、軒並み座礁資産となる事が想定されます。
カーボントラッカーは、こうした座礁資産となる資産に多くの
投資が行われており資本の浪費となっていること、座礁資産の発生
を防ぎ、資本を適切に使ってエネルギー転換を進めるべきである
ことを指摘しました。
◆暗礁は見えてきている
座礁資産は遠い産油国の話ではありません。カーボントラッカー、
東京大学、CDP(旧カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)
は2019年10月、再生可能エネルギーのコスト低下により、日本の
石炭火力発電関連施設は最大710億ドル相当の座礁資産と化す
リスクがあると指摘しています。
金融界では既に座礁資産への対応が始まっています。2010年代
半ば頃から、年金基金等の大型投資家は座礁資産化するリスクを
抱える企業への投資を引きあげる事(ダイベストメント)を
始めています。ESG投資の広まりは、座礁資産リスクの回避が
一因との指摘もあります。
化石燃料から始まった座礁資産という概念ですが、徐々にその
定義は広がっており、今日では「市場環境や社会環境の大きな
変化により、価値が大きく損なわれてしまう資産」が広く座礁資産
と呼ばれるようになっています。
この定義に基づけば、人類の歴史は座礁資産の歴史だったと
言えます。蒸気船の発明は帆船の資産価値を奪い、鉄道や自動車の
普及は馬の資産価値を損ないました。次に座礁する事が分かって
いる「化石燃料」という蒸気船からどのタイミングで降りるのか。
企業、投資家、そして私たち1人1人が、選択を迫られています。
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株式会社パデセア 環境法令検定事務局長
黒柳和志
東京都千代田区岩本町2-7-13 内田ビル4階
TEL:03-5829-5963
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くろぐろとした煙を吐き、大海原を進む蒸気船。蒸気船は他の
船を悠々と追い越し、乗客に快適な旅を提供しています。しかし
船が進む先には、暗礁がある事が分かっています。その暗礁は
間違いなくあることは分かっていますが、どこにあるのかはまだ
見えません。
化石燃料を燃やして走るこの蒸気船は、近い将来に「座礁」する
ことが宿命付けられています。しかし、蒸気船は素早く快適なので、
多くの人々はお金を出して蒸気船に乗り続けています。
「座礁資産」とは、いわばこの蒸気船のような資産です。
◆座礁資産とは?
座礁資産(StrandedAssets)とは、イギリスのNGOカーボン
トラッカー・イニシアティブ(以下カーボントラッカー)が、2011年
に公表した報告書「UnburnableCarbon」の中で提唱した概念です。
カーボントラッカーは座礁資産を「低炭素経済への移行に伴う変化
の結果として、経済的耐用年数が終了する前のある時点で、経済的
リターンを得ることができなくなった資産」、より簡単に言えば
「エネルギー転換に関連する変化の結果として予想よりも価値が
低いことが判明した資産」としています。
化石燃料は目下重要なエネルギー源であり、その採掘は莫大な
利益を生み出しています。しかし、地球の年間平均気温の上昇を
抑制するためには、人類が排出できる二酸化炭素の量には限りが
あります。つまり、かなりの量の化石燃料を将来的に地中に埋蔵
したままにしておく必要があります。これは逆に言うと、世界が
地球温暖化の防止を目的に動いている限り、化石燃料の採掘権の
かなりの部分は、将来的になんの価値もなくなってしまう事を
意味します。
具体的にどれくらいの化石燃料を地中に残す必要があるのか、
国際エネルギー機関(IEA)が試算しています。パリ協定の2℃目標を
達成するためには、今後人類が使用できる化石燃料は地球に存在
する化石燃料の3分の1であり、残り3分の2は座礁資産になると
しています。
座礁資産は化石燃料そのものだけにとどまりません。化石燃料を
探査・開発する探査船や採掘リグなどの資産、石油の生産・加工
施設、パイプライン・タンカーなどの流通インフラ、更には化石
燃料を燃焼する設備も、軒並み座礁資産となる事が想定されます。
カーボントラッカーは、こうした座礁資産となる資産に多くの
投資が行われており資本の浪費となっていること、座礁資産の発生
を防ぎ、資本を適切に使ってエネルギー転換を進めるべきである
ことを指摘しました。
◆暗礁は見えてきている
座礁資産は遠い産油国の話ではありません。カーボントラッカー、
東京大学、CDP(旧カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)
は2019年10月、再生可能エネルギーのコスト低下により、日本の
石炭火力発電関連施設は最大710億ドル相当の座礁資産と化す
リスクがあると指摘しています。
金融界では既に座礁資産への対応が始まっています。2010年代
半ば頃から、年金基金等の大型投資家は座礁資産化するリスクを
抱える企業への投資を引きあげる事(ダイベストメント)を
始めています。ESG投資の広まりは、座礁資産リスクの回避が
一因との指摘もあります。
化石燃料から始まった座礁資産という概念ですが、徐々にその
定義は広がっており、今日では「市場環境や社会環境の大きな
変化により、価値が大きく損なわれてしまう資産」が広く座礁資産
と呼ばれるようになっています。
この定義に基づけば、人類の歴史は座礁資産の歴史だったと
言えます。蒸気船の発明は帆船の資産価値を奪い、鉄道や自動車の
普及は馬の資産価値を損ないました。次に座礁する事が分かって
いる「化石燃料」という蒸気船からどのタイミングで降りるのか。
企業、投資家、そして私たち1人1人が、選択を迫られています。
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