◇パデセアメールマガジンVol.239◇スカイツリーの『根』
2025/10/05 (Sun) 12:00
◇パデセアメールマガジンVol.239◇
スカイツリーの「根」が吸い上げるもの
~地底の未利用再エネ~
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10/21(火)18:00までのお申し込みをお忘れなく!
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特集:スカイツリーの「根」が吸い上げるもの
~地底の未利用再エネ~
皆様もご存知の東京スカイツリー。空にそびえる鋼の大樹、
地上634mの大鉄塔です。では、東京スカイツリーがさながら本物
の樹のように、「根」から地中のエネルギーを吸い上げている
ことはご存知でしょうか。
地下120mにまで伸びるスカイツリーの「根」は、植物のように
地下水や地中の養分を吸い上げるのではありません。根は地中の
「熱」を地上へと吸い上げ、スカイツリーや周辺建物を冬は温め、
夏は冷やしているのです。
◆地中熱とは?地熱とは違うの?
スカイツリーが利用している「地中熱」は、まだ広く知られて
いない分野ですが、省エネルギーや脱炭素経営を進める上で注目
に値する存在です。
地中熱とは、地面の浅い部分に蓄えられた熱エネルギーのこと
を指します。地表から数メートル掘り下げると、外気の影響が
少なくなり、1年を通じてほぼ一定の温度(おおむね15℃前後)を
保っています。この安定した温度を冷暖房や給湯などに利用する
技術が「地中熱利用」です。例えば、夏は外気が30℃を超えても
地下5メートルでは15℃程度しかありません。そのため、冷房時
には外気よりも低い地中温度を利用して効率よく熱を逃がすこと
ができます。逆に冬は外気が0℃近くに下がっても地下は15℃程度
を維持しているため、暖房時には効率よく熱を取り込むことが
できます。つまり「夏はひんやり、冬はあたたかい」という
地中の特性を活かして、建物の空調負荷を減らすのです。
ここで混同しやすいのが「地熱」との違いです。地熱は地球の
奥深くから湧き出る高温の熱エネルギーであり、主に火山地帯で
見られる資源です。地熱発電のように数百度の蒸気や熱水を利用
するため、大規模かつ特定の地域に限定されます。一方、地中熱
は浅い地層に存在する低温の熱であり、火山地帯に限らず都市部
を含め全国どこでも利用できます。発電には向きませんが、
冷暖房や給湯といった熱利用に適しており、建物単位や地域単位
で導入できる点が大きな違いです。
◆地中熱をどう使うの?
地中熱を活用する主な方法は「地中熱ヒートポンプシステム」
です。これは地中に埋設したパイプに不凍液などの媒体を循環
させ、地中との熱交換を行う仕組みです。夏は建物内の熱を
地中へ逃がし、冬は地中から熱を取り込むことで、高効率な
冷暖房が可能になります。従来の空気熱源ヒートポンプと比べて
も、外気温の影響を受けにくいためエネルギー消費量を削減でき、
CO₂排出削減にもつながります。スカイツリーの例では、同規模
の従来式システム(冷熱:空冷チラー、温熱:ガス焚きボイラー)
と比べ、エネルギー消費量を年間約48%、CO2排出量を約40%削減
しています。
また、大気中への熱放出がないためヒートアイランド対策に
なるほか、災害時のレジリエンス向上などの副次的効果も報告
されています。
地中熱は地域を問わず導入できることから、企業のオフィス
ビルや物流施設、商業施設、農業用の温室、雪国の融雪設備、
個人向け住宅など、幅広い用途で実用化されています。
◆地中熱の課題
欧米や中国では広く活用されている地中熱ですが、国内での
普及と知名度の向上は伸び悩んでいます。
最大の欠点は、地下にパイプを埋設する工事が必要なため
初期投資が高額となる点です。冷暖房の運転コストは抑えられる
ため、長期的にはエネルギー費用の削減が期待できますが、
回収には時間がかかります。また、地下の地質条件によって
施工方法やコストが変わるため、事前の調査が不可欠です。
導入に際しては、自治体の補助金制度や国の支援策を活用
することが推奨されます。さらに、まだ一般には知名度が低い
ため、事業者やユーザーへの普及啓発が今後の大きな課題です。
地中熱は太陽光や風力と比べ安定性が高く、天候に左右され
ないという強みを持ちます。さらに都市でも導入可能である
ことから、地中熱は「地域に根ざした再生可能エネルギー」
として非常に有望です。
太陽光発電で「光合成」し、地中に「根」を巡らせて地中熱
を汲み上げる。スカイツリーがそうであるように、未来の建物
は「木(ツリー)」のような存在になっていくのではないでしょうか。
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※当メールは送信専用です。お問い合わせのある場合はお手数
ですが、以下のメールアドレスまでご連絡お願い致します。
info@pdca.co.jp
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株式会社 パデセア 環境法令検定事務局長
黒柳和志
東京都千代田区岩本町2-7-13 内田ビル4階
TEL:03-5829-5963
http://www.pdca.co.jp
e-mail info@pdca.co.jp
スカイツリーの「根」が吸い上げるもの
~地底の未利用再エネ~
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~地底の未利用再エネ~
皆様もご存知の東京スカイツリー。空にそびえる鋼の大樹、
地上634mの大鉄塔です。では、東京スカイツリーがさながら本物
の樹のように、「根」から地中のエネルギーを吸い上げている
ことはご存知でしょうか。
地下120mにまで伸びるスカイツリーの「根」は、植物のように
地下水や地中の養分を吸い上げるのではありません。根は地中の
「熱」を地上へと吸い上げ、スカイツリーや周辺建物を冬は温め、
夏は冷やしているのです。
◆地中熱とは?地熱とは違うの?
スカイツリーが利用している「地中熱」は、まだ広く知られて
いない分野ですが、省エネルギーや脱炭素経営を進める上で注目
に値する存在です。
地中熱とは、地面の浅い部分に蓄えられた熱エネルギーのこと
を指します。地表から数メートル掘り下げると、外気の影響が
少なくなり、1年を通じてほぼ一定の温度(おおむね15℃前後)を
保っています。この安定した温度を冷暖房や給湯などに利用する
技術が「地中熱利用」です。例えば、夏は外気が30℃を超えても
地下5メートルでは15℃程度しかありません。そのため、冷房時
には外気よりも低い地中温度を利用して効率よく熱を逃がすこと
ができます。逆に冬は外気が0℃近くに下がっても地下は15℃程度
を維持しているため、暖房時には効率よく熱を取り込むことが
できます。つまり「夏はひんやり、冬はあたたかい」という
地中の特性を活かして、建物の空調負荷を減らすのです。
ここで混同しやすいのが「地熱」との違いです。地熱は地球の
奥深くから湧き出る高温の熱エネルギーであり、主に火山地帯で
見られる資源です。地熱発電のように数百度の蒸気や熱水を利用
するため、大規模かつ特定の地域に限定されます。一方、地中熱
は浅い地層に存在する低温の熱であり、火山地帯に限らず都市部
を含め全国どこでも利用できます。発電には向きませんが、
冷暖房や給湯といった熱利用に適しており、建物単位や地域単位
で導入できる点が大きな違いです。
◆地中熱をどう使うの?
地中熱を活用する主な方法は「地中熱ヒートポンプシステム」
です。これは地中に埋設したパイプに不凍液などの媒体を循環
させ、地中との熱交換を行う仕組みです。夏は建物内の熱を
地中へ逃がし、冬は地中から熱を取り込むことで、高効率な
冷暖房が可能になります。従来の空気熱源ヒートポンプと比べて
も、外気温の影響を受けにくいためエネルギー消費量を削減でき、
CO₂排出削減にもつながります。スカイツリーの例では、同規模
の従来式システム(冷熱:空冷チラー、温熱:ガス焚きボイラー)
と比べ、エネルギー消費量を年間約48%、CO2排出量を約40%削減
しています。
また、大気中への熱放出がないためヒートアイランド対策に
なるほか、災害時のレジリエンス向上などの副次的効果も報告
されています。
地中熱は地域を問わず導入できることから、企業のオフィス
ビルや物流施設、商業施設、農業用の温室、雪国の融雪設備、
個人向け住宅など、幅広い用途で実用化されています。
◆地中熱の課題
欧米や中国では広く活用されている地中熱ですが、国内での
普及と知名度の向上は伸び悩んでいます。
最大の欠点は、地下にパイプを埋設する工事が必要なため
初期投資が高額となる点です。冷暖房の運転コストは抑えられる
ため、長期的にはエネルギー費用の削減が期待できますが、
回収には時間がかかります。また、地下の地質条件によって
施工方法やコストが変わるため、事前の調査が不可欠です。
導入に際しては、自治体の補助金制度や国の支援策を活用
することが推奨されます。さらに、まだ一般には知名度が低い
ため、事業者やユーザーへの普及啓発が今後の大きな課題です。
地中熱は太陽光や風力と比べ安定性が高く、天候に左右され
ないという強みを持ちます。さらに都市でも導入可能である
ことから、地中熱は「地域に根ざした再生可能エネルギー」
として非常に有望です。
太陽光発電で「光合成」し、地中に「根」を巡らせて地中熱
を汲み上げる。スカイツリーがそうであるように、未来の建物
は「木(ツリー)」のような存在になっていくのではないでしょうか。
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